ライバル

えもーしょん 小学生篇 #48

ライバル

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.08.26

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#48
「ライバル」
(2003〜2010/カイト・小学生)

ボクのことが、絶対好きだと

勝手に思い込んでいる、近所の美女は

5つ上の、高校2年生のあっちゃん。

ある日、もうそろそろ

チュー出来そうな気がして

「鎌倉は波がいいらしい」

と、確認もしていないのに

鎌倉の方へ行こうと、誘った。

これには、訳がある

思春期を迎えたボクは、あっちゃんと

手を繋ぎ、海沿いを歩きたかった。

それも、夕日が綺麗な時間に。

そして、あたりは少し暗くなった時

ファーストキスをキメようと考えていたから。

そのためには、知り合いがたくさんいる。

地元の海では、お互い周囲を気にして恥ずかしい。

ボクは、初めてジェントルな心を持って

あっちゃんの視線を気にし、鎌倉へ誘ったんだ。

鎌倉へ行くことがまずスタートなのに

誘う事を決めた次点で、少し満足してしまったけど

誘ったあっちゃんが、すんなり「行こ~」なんて言うもんだから

ちょっとびっくりしたけど

これは、いける!!!

と、確信した。

そして、七里ヶ浜に着くと

奇跡的に、波がめちゃくちゃいい。

セブンイレブンに寄って、飲み物とお菓子を買って

海の目の前の駐車場に自転車を止め

準備をしていた。

あっちゃんが、カゴからバスタオルとウエットを取り出すと

「き、着替えが見れるのか!」

と、胸を躍らせ

ボクも、横でそっと着替えることに。

チラチラと、あっちゃんを覗くと

まぁ、そりゃそうか

水着を着ていない訳がなかった。

さっさと着替えを済ませ、WAXを塗り

海へ向かった、アウト出ると

見たことがあるような、人がいて

なんとあっちゃんが

「おはよう~」

と、挨拶しに行った。

イケメンのサーファーと楽しそうに

会話をしているあっちゃん。

奥にセットが見え

イケメンも、追いかける。

あっちゃんを奪われたボクは

絶対に乗らせまいと

必死にパドル。

イケメンもボクに気づいたのか、競ってくる。

体重の軽いボクが先にテイクオフして

セットに乗った。

あっちゃんが見ている。

そう思って、頑張った。

乗り終え、パッと起きを見ると

あっちゃんはボクに背を向け

イケメンと楽しそうにしていた。

沖へ戻る、パドルのひと漕ぎが重い。

目には涙が浮かび

さらには、自分の勘違いと

自意識の高さに、悲しくなり

涙が止まることは無かった。

「もう帰ろう」

と、ビーチに戻りみんなが乗っている姿を眺め

ボーッとしていると

なんだかうとうとしてきて…。

続く


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