えもーしょん 大人篇 #2
冷蔵庫の前で。
2016~/カイト・大人
Contributed by Kaito Fukui
People / 2019.12.24
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#2
「冷蔵庫の前で」
(2016~/カイト・大人)
家を出て、初めての一人暮らしが始まった。
周りの友達は、都会の景色や人
見慣れない景色、お店に
目を輝かせているが
ボクには何も、輝かない。
なぜなら
彼らには、夢がある。
夢を見て、夢を追い
夢を掴むため、きっと都会に
来たんだろう。
今のボクには、夢がない。
夢を見たいが、見る夢もない。
夢がなんなのか、それさえも
遠く感じる。
6畳ワンルーム、縦長のボクの家。
買ったばかりのIKEAのソファに
寝転びながら
ただ、やる事もなく
昼間から
風に揺れる、洗濯物をただ見ては
ボーっとしていた。
インスタグラムを開けば
夢を見ていた頃のまま。
サーフィンの映像や
同期の輝かしい、投稿が載っている。
ボク「もう、どうでもいいや」
と、フォローを外していく。
何かないか
冷蔵庫を開けると
中身は空っぽで
ボクの心を表しているようだ。
冷蔵庫の前で、なんだか
わからなくなって
外に出て、歩いてみても
答えは見つからない。
公園のブランコで、1人
思いっきり、揺さぶってみても
一回転するはずもなく
虚しく諦める。
1人、寂しく揺れるブランコを背に
家に帰る。
何かないかと
冷蔵庫を開けてみても
やっぱり、中身は空っぽで
夢でも、中に入っていればいいのに。
と
訳の分からない事を言い始めた自分に
驚きながら
扉を閉め
冷蔵庫の前で、しゃがみ込む。
ボク「あぁ、クソ」
ぼくはボクを、殺してしまいたい。
ズッタズタに切り刻んで
食ってやりたい。
綺麗に、全部解体して
冷蔵庫をいっぱいにしてやりたい。
なんかもう、どうしたらいいんだ。
18歳のボクは彷徨い、もがいていた。
ボク「もう少しだけ頑張らなくちゃ」
心から、そう聞こえると
立ち上がり、ソファに座り
明日にはきっと
答えが見つかるはず。
と
インスタグラムを開く。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!