フリーマーケットの紳士的な値下げについて。

えもーしょん 中学生篇 #18

フリーマーケットの紳士的な値下げについて。

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.03.04

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#18 「フリーマーケットの紳士的な値下げについて」
(2010〜2013/カイト・中学生)

3月1日 日曜日

ヒュゥゥゥゥゥゥゥッ~

窓の隙間風が、音を立てるほど

外は、風が強く吹いていた。

「出たくないなぁ」

と、思わず口に出す。

すると、

「フンガ、フンガ、ブヒ、ブヒ」

と、愛犬バローズがやって来て

こんな日に限って

散歩へ連れて行けと、訴えてくるのだ。

ボクは、よだれまみれの

バローズを抱っこして

窓の外を見せてあげた。

「バローズ、ほら、風凄いよ」

すると、彼は

ブルブルブルブルー!!!

と、体を激しく震わせ

ボクに、よだれを撒き散らす。

彼は、行くそうだ。

こんなにも、風が強いというのに…。

リードをつけて、外へ出る。

冷たい風だと、思っていたが

生ぬるく、そして

どこか、懐かしい匂いが

風に乗りやって来ていた。

それは、確かに

夏の気配だった。

「イオンサプライ、ポカリスウェット」

今にも、ポカリのCMが始まりそうなほど

風が、懐かしかった。

が、しかし

風が強く、砂が海から飛んでいる来て

目が痛い。

バローズと、散歩しているが

だんだんと、イライラしている

自分に気がついた。

「もう、帰ろう。帰るよ」

と、半ば強引に

バローズを引っ張り

最終的には、抱っこし

家に帰る。

家に、着くと

彼の足を洗い

砂だらけの口周りを洗った。

ひと仕事を終え、ソファに座り込むと

ふと、チョコチップメロンパンが

食べたくなった。

近くの、スーパーへは

自転車で約5分

この、約5分の距離とは

1番、行くか行かないか

悩ましい、距離だ。

「とりあえず、行ってみよう」

と、途中で帰りたくなったなら

帰ればいい。

そう、思ったボクは

¥105 ぴったりを持って

スーパーへ、向かった。

やはり、途中

風が強くて、漕いでも漕いでも

自転車が、進まない。

イライラが募る…。

なんとか、スーパーへ着く頃には

疲労困憊。

チョコチップメロンパンなんて

どうでもよくなっていた。

「ふぅ」

ため息を1つ

駐輪場に、自転車を止めて

目当ての、チョコチップメロンパンのもとへ

向かう。

日曜日だからか、スーパーはやや混んでいる。

ポケモンパンの横にある

チョコチップメロンパン。

その横には、シュガーレーズン。

「うーーーん」

5分ほど、売り場をうろうろし

結局、チョコチップメロンパンを

買った。

スーパーを出て

駐輪場へ、戻ると

それは、ボクのイライラを

爆発させる、光景が。

ボクの、自転車の真後ろに

自転車が、止まっていたのだ。

この場合、ボクの左右が

埋まっていて、どこも

空いていなかったのなら

理解できるが

左右は、ボクが到着した頃から

空いていた。

それに、スーパーでの滞在時間は

10分程度だ。

「なんて、やつだ!!!」

こういう、雑なやつは

大抵、フリーマーケットで

値切ってくる。

「これ、幾ら?」

「~円です」

「もうちょっと安くしてよ」

「じゃぁ、~円です」

「もう少し安くなるなら買うわ」

と、めんどくさいパターンが多い

最初から、

「~円にして欲しい」

と、言った方が

紳士的な、値下げ交渉ではないだろうか。

と、悶々とした。


春一番であった。


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