こんなの初めて

えもーしょん 高校生篇 #53

こんなの初めて

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.10.07

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#53
「こんなの初めて」
(2013〜2016/カイト・高校生)

仮病のプロのボクは高校生にもなると

息をするように、仮病を使っては学校を休んだり早退した。

もちろん、仮病に対する罪悪感なんてものは一切なかった。

そんなものが、はたして1回目にもあったのか疑問である。

その日も、生活のルーティーンのように仮病を使い

ベットに横たわり、アニメを見ていた。

が、昨晩にテレビで便秘の危険性を見てしまったママが

1週間も連続「お腹痛い」を使うボクを心配したのか

病院へ行き、予約をした。

時間になり、病院へ向かうといつものチョイボケおじいちゃん先生が

「若いのに便秘かい」なんて冗談まじりに

「お前、仮病だろ」と遠まわしに言ってくる。

それを見ている、美人看護師さんはいつものように

おじいちゃん先生を冷たい目で睨んでいる。

おそらく、この2人の間には愛または恋があるだろう。

美人看護師さんは、遺産を狙っているに違いない。

ポックリ先生が逝ってしまった後は

この病院を壊し更地にして、コンクリート打ちっぱなしの

わかりやすい家を建てるつもりだろう

そんなことを考え、ボケーっとしていると

おじいちゃん先生が「座薬持ってきて」と言った。

やる気なさそうな、美人看護師さんも

その言葉に思わず「え?」と一瞬だが動揺していた。

しかし、何事も無かったかのように歩き始め

どこかへ何かを取りにいった。

ボクの横では、「可哀想に…」と言わんばかりの顔をしているママがいる。

この時ボクはまだ座薬がなんなのか知らない。

が、恐らくなにか良くないことが始まることは感じていた。

なぜなら、突然おじいちゃん先生が元気になり

手袋をはめたからだ。

「ここに、こう。こんな感じになって」

と、自ら四つん這いになり馬の姿勢を見せた。

靴を脱ぎ、ベットの上でボクは言われた通り

四つん這いになった。

すると

「あぁ、ごめん。パンツ脱いで」

と、おじいちゃん先生は言った

「へ!?」

何秒だろうか、ベットの上で四つん這いになったボク

下を向いて笑いを堪える先生。

今にも泣きそうな、ママ。

何秒だろうか、美人看護師さんにが戻ってくるまでの

数秒、ボクら3人は確かに時間を止めた。

そして、おじいちゃん先生は言った。

「優しくするから。ね?」と

続く


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