幸せな時間

Emotion 第42話

幸せな時間

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.09.19

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第42話

セミの声も気がつくと聞こえなくなって、苦しい暑さだけが街に残っている。耳が痛くなるほどの冬は今年も本当にやってくるのか心配になってしまう。それと同時にこの苦しい暑さをまた来年も乗り越える事が出来るのだろうかと大きな空に取り残された雲を見て思う。

お昼ご飯を食べに駅の方へ向かう途中、着なれないスーツ姿の集団とすれ違った。就活なのか中途採用のグループなのか、しばらく考えているうちに何となくカイトはこの夏に自分への期待や後悔や思い出もそっと残してどこかへ向かう気がした。それでもそんなにすぐには動かないだろうと、方向を変えてカイトの家へと向かう。

マンションのエントランスでカイトの部屋の番号を押し呼び出すと

カイト「ほーい」

と彼か言うとガラスのドアが開いた。

エレベーターに乗って彼の部屋の前に着くと、よっ! と出迎えてくれたがどうやらこれからどこかへ行くようだった。無人島にでも行っていたのかとお前ほどに伸びた髪と真っ黒に日焼けした肌でスーツを着ていた。

僕「どこか行くの?」

カイト「これから面接」

僕「おー」

カイト「受かるかわからないけどね」

カイト「今度はブラックじゃ無さそうだから期待大」

僕「受かるでしょ、大丈夫だよ」

カイト「やるだけやってみるよ」

ダラダラと彼の家で漫画を読もうと思っていたけれど、スーツ姿の違和感に包まれた彼を駅まで送り改札を通ってホームへの階段を登る後ろ姿を見てやはり彼はもう戻らないんだろうな。と感じた。


続く



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