旅はトラブル

えもーしょん 大人篇 #45

旅はトラブル

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / jul.17.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#45
「旅はトラブル」
(2016~/カイト・大人)

夏へ行ってきます。

そう言って、家を出た。

駅へ向かう道のおくからは

夏の匂いがする。

うっすら、遠くからセミの声が聞こえて

口の中は、とっくにブルーハワイの味がしている。

気のせいか。

1人、都会の駅で

海パン、ビーサン、Tシャツと

いかにも、これから南の方へ旅行です。

なんて、格好をしている。

羨ましいのか、みんなボクに釘付け。

爪先から、頭の天辺まで舐めるように見てくる。

無理もない。

出勤前に、こんな夏男を目にしたら…。

きっと彼らはお昼休みに

次の休みの行き先を決める事だろう。

夏を先取りする、ボクからのアドバイスは

とにかく、南の方へ。

うんと、南の方へ。

誰もいない、楽園へ。

それしかない。

暖かい方へ行った方がいい。

心はウキウキするし。

暑さのせいか、街を歩く可愛いあの子の服装も軽装になるのだ。

青く高い空。

大きな入道雲に

エメラルドグリーンに広がる海。

こんな、最高な景色を目の前に

文字通り、身も心も解き放たれるのかもしれない。

そうだ、そのとうり。

旅に出るなら、遠くの暖かい方へ。

ルッキングッドなオンナノコに出会えたら…。

そんなことは、言われる前に期待する。

「どこからきたの?」

沖縄なまりの、君が言った。

「東京から」

東京から来たことを恥じるように小声で返す。

「都会は疲れるでしょう」

寂しそうな君。

「少しね」

「こっち来て」

そう言って、ボクの手を取り君が引っ張る

真っ白なビーチを2人で歩くと

大きな岩が出てきて

「ここ、ここで少しまってて」

少し、嬉しそうな君の顔が

だんだんとオレンジ色に染まって来る。

「もう少しね」

そう言って、ボクらは夕陽に変わる太陽と

嘘みたいに真っ青な海を見つめる

「ほら、あそこ見て」

指差す先には

ハート型に削られた岩に夕陽が沈んで

綺麗なハートの影が海に広がる。

「ふふふ」

思わず笑ってしまう。

「どうして笑うの?」

少し恥ずかしそうに君が言った。

「ベタだなぁって」

と、ボク

「もう!」

君はそう言って、ボクに砂をかける。

いいじゃない。

そんなことを考えていると

空港までの高速バスの駅に着いた。

よっこらしょ。

と、荷物を持って

電車を降りる。

また一歩、夏の方へ。

改札を出ると、高速バスの文字。

階段を降りて、バス停へ。

時刻表を確認。

何やら、赤い文字。

「コロナウイルス〜〜〜運行休止」

ん!!!!!?

やってしまった。

例の、ウイルスのせいで

バスが運行休止。

旅は、トラブル。

こんなのは、しょっちゅう。

焦ることはない

なぜなら4時に起きたのだから。

危なかった。

急いで、駅に戻り

成田エクスプレスに飛び乗った。

本当にギリギリ。

ラスト5分でチェックインを済ませ

ムカつくので、機内でハンバーガーを食べてやろう。

そう言って、ハンバーガーとポテトとコーラを買って

いざ、搭乗。

飛行機に乗り、席に着いて思い出す。

レンタカー予約したっけ?

まぁいいか。

なるとかなるか…

旅はトラブル。

夏はすぐそこ。


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