えもーしょん 大人篇 #51
大学へ行きたかった
2016~/カイト・大人
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.08.17
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#51
「大学へ行きたかった」
(2016~/カイト・大人)
大学は人生の夏休み。
なんて、言葉を聞いたことがある。
卒業して社会人になると
仕事に追われ、残業。
週休2日のうち1日は仕事になり
1日は疲れて寝てしまう。
だから、大学時代に名一杯遊びなさい。
そういう意味も、あるらしい。
社会に出たら、暗い未来が待っている。
としか聞こえない言葉だったが
だからと言って
大学へ進学する人は少ないはず。
高校3年生の夏
そろそろ、進路を決めなくてはいけなかった。
幼い頃から、サーフィンをしていたせいか
ボクの周りには、会社勤めの人よりも
職人が多くそんな中で育ったから
将来の大きな、イメージに
会社に就職する。
という考えが、存在していなかった。
じゃあ、何になるのかと聞かれると
はっきりしていなかったのも事実。
学校の先生は
卒業後の進路がはっきりしていない人は
ろくな人生を過ごせないし、一生ニートだ。
と、軽い脅しをかけながら
とにかく、進路がはっきりしていないボクは
学校へ行くたびに、別室に連行され
ボクの成績で入れる学校リストから
学校を選びなさい。
と、急かされていた。
「ふざけんなよ、ばーか」
「お前らに決められてたまるか」
と、内心思っていたものの
流石に、停学3回目は嫌な予感がしたので
はい、はい。とおとなしく話を聞いていた。
「とにかく、とりあえず、どこでもいいから大学へ行きなさい」
と、何度言われたことか。
焦って、興味のない大学に入り
意味わからない、授業を聞いて
チャラチャラ遊んだって
4年後には、また進路に悩む事になる。
その時には、何かが遅い気がした。
ボクは進学せず
自分の生まれ持った能力で生きて行く。
と、言ったものの
お母さんが保険を打って
専門学校へお金を払って入学させてくれた。
けれど、やっぱりそんなのは嫌だ。
と、入学式当日に結局辞めてしまった。
高校卒業後は、バイトをしながら一人暮らしを始めた。
「6畳、ワンルーム」
と、書かれていたのに絶対4畳しかない部屋で
「駅から徒歩、10分」
と、書かれていたのに測ると25分もかかり
さらには、隣の部屋が事故物件。
引っ越して、3日後に
向かいの部屋の誰かが亡くなったいた事が発覚。
初めて、ここで
「大学へ行けばよかった」
と、後悔しそうになる。
それからというものの
絵を描いても、描いても
人の目に止まる事は、一切なく
過酷な日々を過ごしていた。
なぜか、バイトをしているから
ボクは、売れないんだ!
と、一皮向け、とんがるべきだと
考えたボクは
バイトを辞めて、絵だけを描く事に。
すると、やっぱり
次の月の家賃を滞納。
「明日には、絵が売れる!」
と、なんともポジティブマインドなボクは
この、「明日には、絵が売れる!」
おまじないを何度も何度も唱えながら
折れそうな心を、必死に支えていた。
しかし、絵が売れる事はなく
だんだんと、支えていたものが
耐えられなくなり始めたのは
電気が付かなくなった日の事である。
家の中にいると、よくない。
と、考えたボクは
いつものように、街を徘徊していた。
夕方、暗くなり
家に帰ると、電気が付かなかった。
「あれ?停電?」
と、3日ほどそのまま過ごしていたが
隣の部屋から、テレビの音がしている事に気がつく
そして、引っ越してから半年
初めて、ポストへ向かうと
黄色い封筒や、赤い封筒が沢山入っていた。
「あ!そうか!止まっているのか!」
と、初めて気づく。
「でもな、お金ないからな」
「明日、電話してみようか」
次の日、貯金箱に入れてあった
10円玉をいくつか持って
家の前の、公衆電話へ向かった。
もちろん、家賃を滞納しているので
携帯も滞納。
しかし、普通の滞納と一緒にされたくない。
ボクは、この時点で
「強制解約」
という、滞納のその先を経験していた。
3ヶ月、携帯代を滞納したボクは
なんと、強制解約させられていた。
が、落ち込む事はない。
iPhone はいまだボクの手の中。
毎日、コンビニの駐車場で
コンビニのwifiを借り
YouTubeやInstagramは快適に使えていた。
携帯が使えないので
もちろん、諸々の連絡は
Instagramか、iMessages
電話は、ラインか公衆電話
電気会社に電話をして
「お願いだから、電気を付けてください。」
と、説明しているうちに
お金が足りなくなり、電話が切れてしまった。
急いで、家に帰り
もったいないが、100円玉を持って
再び、公衆電話へ
「クッソー!!!!!!」
と、叫びながら
100円玉を入れると
音声ガイダンスに、まんまと
時間を取られ、担当の人が出た瞬間
電話が切れた。
「もういい!!」
と、家に帰り
ちょっと流石にやばいかも。
と、焦り始めた。
次の日には、ガスが止まった。
久しぶりに会った、友人に話をすると
「ましで!?水道止まったら死ぬじゃん!」
と、言われ
「そうだ!それだけは払わないと!」
と、思いポストを漁る。
しかし、そういえば
水道代を引っ越してから今まで
一度も払った事がない事に気づく。
そう、これが奇跡の始まり。
キッチンの下の、契約書を見ると
何と、ボクの住んでいるアパートは
井戸水だったのだ。
「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
あまりの嬉しさに、ボクはつい叫んだ。
ここから、ボクの逆転劇が始まる。
続く
アーカイブはこちら。
小学生篇
中学生篇
高校生篇
大人篇
Tag
Writer
-
Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!