えもーしょん 中学生篇 #15
ボクを見つけに。
2010〜2013/カイト・中学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.02.07
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#15 「ボクを見つけに。」
(2010〜2013/カイト・中学生)
Zzz
「BAD DAY」が携帯から流れ
目が覚める。
最近の、目覚ましの音楽は
ダニエルパウターのBAD DAY。
ボクが、お正月
おみくじを引いて、大凶が出た時に
「お、ラッキーね。もうこれから運は上がるだけだね」
と、言った。
おおおおおおぉぉぉぉぉ。
それいいね。
それから、ボクの朝はBAD DAYから
始める事にした。
時計を見ると
AM 7:00
あー、やっぱりな。
まぁ、いいか。
今日は、何回
BAD DAY が流れたのだろうか…
閉まってしまった
歯ブラシをリュックから出して
洗面台に置く。
この先、シャワー浴びられるか
わからないから
今のうちに、浴びておこうと
朝シャンをキメた。
サッパリして
もう一度、デニムを履く。
歯を磨いて、もう一度
ジップロックに入れる。
「ふぅ」
リュックを持って
キッチンへ向かうと
ママがテレビを見ていた。
「おはよう、遅かったね」
「おにぎり、作っておいたよ」
と、ママが言う。
「ありがとう」
と、席に座り、おにぎりを食べていると
「今日は、どこも雨降らないみたい」
「そういえば、お金はあるの?」
と、心配そうにママが言った。
反抗期のボクは
「あるよ」と少し格好つけて
返事をする
「いくらあるの?」
「5万」と少しヤンキーチックに返事をする
「5万円の旅ね」と
ちょっとよくわからない事を言い出すママ。
おにぎりを食べ終わり
「行ってきます」と家を出る。
スケボーに乗り
駅へ向かう。
「はぁぁぁぁぁぁぁ、気持ちいい」
学校へ向かう、同級生を横目に
ひたすら、プッシュする
たまに、
「あ、かいと!」と
聞こえるが、止まることなく通り過ぎてしまう。
10分ほどして
駅に着く、「まずは行き先を決めよう」と
切符売り場の、上の
運賃表を見る。
さて、東京方面へ行って新幹線に乗るか
それとも、千葉方面か
いや、静岡方面もありだな。
と、向かう先は
浜松に決めた。
切符を買って、電車に乗り
安心した、ボクは
重大な過ちを犯してしまう。
安心したのか
ママへ電話してしまったのだ。
「もしもし、浜松へ行くよ。もう電車に乗ったよ」
「何時に着くの?」
「12:30に着く電車だよ」
「はーい、気をつけてね」
最後の乗り換えを終えて
電車に乗る。
その電車の終点が浜松なのを確認し
1番端の席に座り
よく眠った…。
Zzz
「ハッ!!!」と目が覚めると
浜松の、2つ前の駅だった。
おぉぉぉぉぉぉ。
ナイス。
いつでも、降りる
準備をして、初の1人旅に
ソワソワしながら、窓の外を見ていた。
山を潜り、川を越えて
海沿いを走り
また、山を越え、川を越え
遂に、浜松に到着した。
電車を降り
階段を降り
改札へ向かうと…
「ん?あ!」
よく知る友人の姿が見えた。
少し、走って
改札を出て彼の元へ向かった。
「ロイ君!何してるの!」
彼の名前はロイ君。
ボクと同い年で、実家が
浜松のサーフショップという
生粋のサーファーだ。
「いや、遅いよ!」
と、ロイ君が言った。
「え?」
なんのことかよくわからず
どうやら
さっきの電話の後
サーフボードを持たずに
家を出た、ボクを
もう、帰って来ないんじゃないのかと
相当、心配したらしく
浜松のロイ君の両親へ連絡したらしい。
言われるがまま、ロイ君の
パパとママが待つ、車に乗り
結局、ロイ君の家に1週間
泊まる。という
いつものパターンになってしまった。
「ところで、どうしていきなり浜松?」
「何もないら?」
と、3人が言う。
「自分探しの旅ら」
と、浜松の方言を真似して返す
「かいとが居る間、ロイも学校休むから
沢山遊んで見つかるといいね」
突然の、標準語にびっくりしながら
「いつも、ありがとう」と
お礼をした。
結局、1週間
毎日、目的もなく
遊び倒した。
明日やることは、明日起きたら
決めよう。
そう言って
夜までスケボーをしたり
ゲームセンターへ行って
初めて、コインゲームした。
初めて、ドンキホーテへ行って
初めて、大人のおもちゃに触れた。
1人旅とは行かなかった。
それに
結局、縦と横の繋がりで
今回の旅も助けられた。
肝心な、自分探しは
よくわからなかった。
そもそも、自分が何者かなんて
気にもしたことがないのだから。
そんな事を、ロイ君のパパに話すと
「もう、見つかってるから
大丈夫じゃないか」
と、言われ
結局、最後はみんなで
浜松から、サーフィンをしながら
湘南へ帰ってきた。
家に着くと
ママがテレビを見ていた。
「お帰り、どう?見つかった?」
「ま、今、この瞬間がボクかな」と
反抗期に乗せて、格好つけた。
最後まで、読んでくれて
ありがとう。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!