フランクフルト

Emotion 第5話

フランクフルト

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.07.18

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第5話

そんなこと言うつもりはなかった。

コンビニでフランクフルトを買って公園のベンチでカイトを待っている。セミの声が沢山聞こえて、他に耳に入る音がない。少し大丈夫なのかな。と心配になるほどセミが沢山鳴いていた。

どこかの国のバッタが大量発生したように、日本ではセミが大量発生しているのだろうか。ケチャップとマスタードが一緒に出てくるタイプの容器を綺麗に割って、マスタードだけ出ないようにケチャップだけをフランクフルトにつける。

真夏のフランクフルトは美味い。プールの休憩中に売店で食べるフランクフルトには勝てないが。

大人になってプールへ行きたくても、なかなか1人で行く気になれないのはどうしてだろうか。市民プールで25mを何往復することも悪くはないけれど、それはプールへ行くと言うよりもジムに通うような感覚で。流れるプールで流されたいし、波のプールで浮き輪を着けてぷよぷよと浮いていたい。けれど、トートバックに帰りの着替えとタオルを入れて、海パンを履いて1人で電車に乗って、大きなプールへ行く気にはなれない。

それは、多分子供の頃に友達と早く行かないとウォータースライダーが混むから。と言って
自転車で爆走しながらプールへ向かう時間が、プールで過ごす時間よりも夏休みを感じて好きだったからだと思う。

カイトが来たらプールへ誘ってみようと思う。


続く



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