レッツ・ゴーマイウェイ!

えもーしょん 大人篇 #6

レッツ・ゴーマイウェイ!

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.01.20

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#6
「レッツ・ゴーマイウェイ!」
(2016~/カイト・大人)

あれは、いつだったのだろうか。

小中高は、人一倍

ネガティブ&自己中。

趣味は、周りの目線を気にする事と

被害妄想。

それに加えて、自分は螺旋丸を撃てると

信じていたし

ロン毛とサングラスの人に憧れて

レッツ不自然、ゴーマイウェイ!

だった。

なのに、なぜか、どうしてか

今は、恐ろしいほどに

周りの目線を気にする事は無い。

被害妄想よりも、可愛い女優と妄想デートを
する毎日だ。

ネガティブはポップに。

病みは、ウェルカム。

「メンヘラ万歳、逆境万歳!」の精神。

いつが、何が分岐点だったのだろうか…。

始まりは

高校卒業間際、冬休み明けの1月

いつにも増して、情緒不安定のボク。

今まで、見下していた

同じクラスの人達が

次々と、大学や就職先を見つけ

内定をもらい

卒業後の進路が決まっていたからだ。

高校卒業後は、プロサーファーとして

生きて行けると、何も疑う事はなく

ここまで来てしまったボクは

つい先日、知ってしまった。

プロサーファーでも

日中は普通に働いている事に。

ボクは、海の中でしか

みんなに会っていなかった。

陸に上がり何をしているかなんて

気にもしなかった。

みんな、プロサーファーの傍ら

ペンキ屋さんや、大工、

スーパーのレジ、etc…。

あげればキリがないほど、働いていた。

それに、家族までいるから

かなり、大変そうだ。

ある晩、ボクのバイト先に

友達のプロサーファーの奥さんと

子供が2人、ご飯を食べに来た。

奥さんは、定食1つと

餃子を6つ。

それしか、頼まなかった。

旦那のプロサーファーは

ボクの中では、ヒーロー。

しかし、最後に活躍したのは

三年ほど前。

それでも、プロツアーのランキングは

常に、トップ10の中に入っている。

しかし、今ここで

家族と共に、晩御飯を食べていない彼。

奥さんが、ご飯を我慢して

子供に食べさせている事。

それは、プロサーファーでは

「食べて行けないぞ」と

文字を見ているかのようだった。

「考えすぎか」なんて事を考えていると

作業服を着た、彼が

遅れて、やって来た。

2人は、何やら話をして

「ビールでいいや」

彼は奥さんに言った。

「ビールでいいや」

プツンと、彼のこの言葉を聞いた瞬間

確かに、絶対的に

ボクの中の何かが切れた。

それは、一瞬だった。

ボクの中で

10数年分の、何かと

10数年分の、ボクが

まるで、走馬灯を逆再生するかのように

すら〜、と

消えて行った。

最後に「ガタッ」と

音を立てて、残ったものは

ただ、黒く何も映らない

スクリーンだけ。

何もなかった。

気がつくと、家にいた。

ボクは、気づいてしまった。

ボクが思い描いていた

プロサーファーは、現実的ではない事。

それに、今このように

ボクが、プロサーファーになったとしても

ボクにも

この世界にも

何も残らない事に。

辞めるなら、今だ。

そう、思った。

続く


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