えもーしょん 高校生篇 #51
ファーストキス
2013〜2016/カイト・高校生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.10.05
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#51
「ファーストキス」
(2013〜2016/カイト・高校生)
はじめに、この回は少しエッチな表現が含まれています。
えもーしょんを日々お子様が眠るまで音読されている
お母さま、お父さま、ご家族は1度ご自身で読まれてから音読してください。
ボクはずっと自分のことを普通にいい人だと思っていた。
バイクで走っている時、出てくる車に道を譲るし
困っていそうな、ご高齢の方がいたら一応気にする素振りもする
それに、どんなに落ち込んでいても必ず笑顔で挨拶もするから
ボクは、自分を普通にいい人だと思っていた。
けど、それは友人との会話の中で知ることになる。
高校2年生のある日、体育の授業が終わり
女子が更衣室から帰ってくるまでの間の男子パラダイスの時間。
友人A君が最近できた彼女に話を自慢げに話してきた。
「この前さ、デートしてきたの~」
「どこいったの?」
「映画館」
「映画館、ベタだね…」
「いや、まぁそうなんだけど映画館行けば、ほぼほぼチューできるって書いてあったからさ」
「で、できたの?」
「いやーーできなかったね、タイミングはあったけどね。かいといつもどうしてんの?」
ボクは、彼の初々しさに少し羨ましさを感じた。
チューでドキドキするなんて、そんな心をいつ失ったのか思い出すこともできない
ファーストキスは中学1年生だった。初めて付き合ったツーブロックのギャルと
図書館の本棚と本棚の間でチューをした。
いま思うと、あの時はまだ股間に身を委ねず冷静だったかもしれない
ファーストキスを特別にしようと入念に計画を練って
ツーブロックのギャルの彼女に「あそこに行くと職員さんが宿題やってくれるらしいよ」
と、嘘をついて誘った。
そして、「宿題の参考になる本を探さないといけない」とか言って
本棚の方まで行き、軽めのハグ。
耳もとで一発「好きだよ」とか言っちゃって
「私も」と予想通りの返事に浮かれ
「キスしていい?」なんて紳士ぶった。
彼女は、「うん」と心の中でささやき頷いた。
そして、計画通り思い出のファーストキスの出来上がり。
と、そんなことを友人のA君に伝えると
彼は、チャイムと同時に「お前は卑怯だ!」と言った
「は!?」自分はいい人だと思っているボクは言い返そうとしたが
「チャイムなったから」と、ニコリと笑うA君
それでもボクは、「かわいいやつだな」と言い返さなかった。
だから、ボクは自分はいい人だと思ってた。
この時までは。
続く
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!