布団

えもーしょん 中学生篇 #67

布団

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.12.15

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#67
「布団」
(2010〜2013/カイト・中学生)

あぁ、布団に帰りたい…。

暖かい、フカフカの布団の中に帰りたい…。

う、ぅ、うぅ…帰りたい…。

冬休み初日、朝から雪が降り、積もり、吹雪くなか

友人のジュンと共にサバイバルキャンプへと向かう。

「ってかどこ行くのー?」

寒すぎて若干イライラしてきた。

「どこ行く~」

絶望的なジュンの返事に、このキャンプは険しくなると悟った。

「どこか決めてないの?」

なぜか常に先頭を歩くジュン。

ゴリゴリと、積もる雪を踏んで行く。

「決めてなーい!」

どうして、こんな状況で嬉しそうにできるのか

彼は本当に同じ人間なのか、実はロボットなのではないかと疑ってしまう。

「決めよう! それ、最初に決めよう!」

時間が経つにつれ風は強くなっていく。

「うみー! 海行こう!」

もうやだ、本当に帰りたい。

「うみー!? なにもないよ!!!」

「いいじゃーん! サバイバルだからねー!」

彼は死にたいのか?そう思う以外になにがあるのだろうか。

まぁしかし、ここらへんでキャンプをするとなると

海以外に思い当たる場所もない。

海と言っても、崖があったりちょっとした林もあるから

おそらく、ノープランに見えて意外となにか考えているに違いない。

そうじゃなきゃ、ジュンのあの荷物はなんだ?

世界一周出来そうなくらいの荷物を背負い、前を歩くジュン。

海まではあと、5分くらいだけど最後に大きな下り坂がある。

この大通りでも10センチは積もっているんだから

車は通らないだろうし、相当積もってるだろうな…。

ボクのVANSはもうびしょびしょ。

靴下を二枚重ねしておかげか、ここまでよく耐えている。

本当に今さっきまで素肌への侵入はなかった。

靴下一枚分でなんとか、耐えていたけど…。

まぁ、この坂道で終わりだろう…。

坂道は想像通りかなり雪が積もっていた、車が通った痕跡もないし

誰かが歩いた跡もない。

そうなると、やっぱりこの降り積もった雪を踏んで行くしかない…。

あぁ、帰りたい…。

一歩、また一歩と進むたびにボクのVANSは悲鳴を上げる。

なんてこった、ついに二枚目の侵入を許してしまった。

ここからは、時間との勝負だ

なるべく速く、キャンプ地を決めてテントを立てて

速く靴を脱いで、靴下を乾かさないと…。

今からはずっと足が濡れていることになる。

それも氷水で濡れているのと同じだから…。

「ジューン! 早く行こう!」

「え? うーん!」

彼はいったいなにを考えているのか…。

続く


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