New kid on the block. #3

情熱の行方。

Contributed by Ryo Sudo

People / jul.03.2020

anna magazine編集長・須藤亮がステイホーム中に考えたことと、すこしだけ旅の思い出。

#3



ここ数日、運営しているWebメディアの企画で、ひとつのテーマでインタビューを続けている。取材対象は30歳前後の「今の自分ができることに真っ直ぐ向き合い、ひたむきに日々を生きている」あらゆるジャンルの社会人だ。強い信念を持って仕事に向き合っている彼らに、この難しい状況においてどんな価値観の変化があったのか(あるいはなかったのか)、率直に聞いてみたかったのだ。

僕らは彼らのことを”Thirty-agers”と呼んでいる。大きなテーマとして「30歳」という年齢を選んだのは、それが今の時代のリアルな「成人年齢」だと考えたから。ハタチ前後で人生の重大な選択を迫られた50年前と比べて、価値観が大きく変化した今の若者は、20代という時代を「試行錯誤しながら、自分がやりたいことを探すための期間」と捉えている人も多い。その思考がとても「ティーンエイジャー」的だから「サーティーンエイジャーズ」。社会人デビューが27歳と遅かった僕もまさにそんな”Thirty-agers”のひとりだった。どんなジャンルだって、本気で向き合える何かを見つけて、ひたむきに打ち込むことができたら、それが最高に自分らしい生き方になる。だからスタートはどれだけ遅くたって大丈夫なんだ。いい知れぬ不安に押しつぶされそうな本心を隠して「まだ本気出してないだけだし、そもそも本気の人ってなんだか暑苦しいから苦手」と、斜に構えまくっていた27歳の自分にカイザーナックルで殴ってでも読ませたい、そんな気分の企画なのである。

LUKE magazine “Thirty-agers”START!!
https://container-web.jp/people/5257.html



そんなわけで編集部みんなが、毎日のようにオンラインインタビューを繰り返している。ちなみにこの状況で、オンラインでの取材の価値は明らかに変化した。「直接会いにこないなんて、ちょっと失礼だよね」と考える人はほとんどいない。逆に時間も場所も制限が少なくなった分、リラックスして自分の思考をありのまま語ってくれる人が多くなったように感じる。

インタビューは1人平均2時間程度。すでに20人以上。時間にして40時間以上インタビューを続けていると、編集部内のメンバーに興味深い変化が起きてくる。”Thirty-agers”たちの情熱的な話に共感したインタビュアー自身の思考が、びっくりするほど前向きに変わるのだ。

「いま聞いた話を、熱いうちに誰かに伝えなきゃ。でもって、共感できる人を増やしたい。こうしちゃいられない、自分も今の現在地で最大のパフォーマンスを発揮しなきゃ。ワクワクドキドキ。今ならなんだって可能な気がする。自分はきっと想像以上だ。ポカリスウェット飲む!」。本当に、そんな感じだ。

人は、「遠くのオピニオンの言葉」より、「身近な人の言葉」にほど強く影響されるものだ。なぜって、そこには揺るぎない「リアリティ」があるから。自分の身近な世界に、手の届きそうな場所に、こんなにも面白い人たちがいたんだ。目の前の誰かが頑張っているなら、自分にだってできるかも、インタビューを終えると、誰もがそんな気分になる。社会と本気で関わり、想いをこれほど真っ直ぐに言葉にできる彼らの言葉は、こういう状況だからこそ、余計に強く僕らの胸を打つ。なにより「今の仕事が大好きなんです」そう胸を張って言えるのは、本当に素敵なことだと思う。だってどんな人だって、自分じゃなくちゃ「自分の仕事」はできないのだから。だからこそ、彼らが発した言葉の気配が頭の中に残っているうちに、他の誰かに伝えたくなるのだ。

もしかしたら1年後はみんな全然違うことを話しているかもしれない。僕らは常に変化するし、取り巻く状況だってくるくると変わる。思い通りになるものなんてなにひとつないし、普遍的なものなんて何ひとつないように思える中で、唯一変わらないもの。きっとそれが「情熱」なんだと思う。



「面白い。ワクワクする。そわそわする。なにかやらなきゃ!」

情熱は、伝播する。誰かの情熱に影響されて、他の誰かがひたむきに向き合える何かを見つける。そしてその情熱が、また他の誰かへと伝わっていく。「何をしているか」じゃなくて、そんな風に「情熱」そのものが、世界のどこかで、誰かの行動を前向きに変えていく。そのことだけでも、とても意義のあることなんだ。

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