初めての気持ち

えもーしょん 高校生篇 #54

初めての気持ち

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.10.08

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#54
「初めての気持ち」
(2013〜2016/カイト・高校生)

昨日まで、読んでくれている

親愛なる読者のみんなならご存知の通り

ボクはいま、病院のベットの上で四つん這いになっている

そして

ちょいスケベなおじいちゃん先生に「あ、パンツ脱いで」

と、言われたばかりだ

ボクは、人生で初めて男の人に「パンツ脱いで」と言われた

なんと、いつもボクが彼女に言っている言葉ではないか

彼女もこんな気持ちなのか…と一瞬頭をよぎったが

この状況で「やだ、脱がせて」とはボクは言えない。

ボクは震える声で

「ぱ、パンツですか?」と分かってはいるのに

奇跡を信じて、一応聞いてみた

「うん、パンツ、早く」

と、絶望の3文字が返ってきた。

いや、待てよ。

「パンツ脱いで」とは言われたけど

このまま、何事もないかのようにパンツを脱ぐのか?

と言うか、脱げるか!!!!!!!

そんな、メンタルはボクには無かった。

そんなことよりも、ボクは次の瞬間

自分の耳を疑うことになる。

なんと、「せ、先生。脱がせて」と、言ったのだ。

わかってる。自分でもわかってる

自分がなにを言ったのか。

自分でもわかってる。いまボクは女の子になった。

ボクと先生の今のこの会話は、完全に

ボクと、彼女のベットの上での会話だ。

ママは泣いた。

美人看護師さんは、今にも笑い転げそうだ。

隣の病院室から、おばちゃん看護師さん達まで駆けつけてきた。

そして、いまボクは震えている。

おじいちゃん先生は、ボクのズボンのチャックを下ろした。

ボクは、震えている。

おじいちゃん先生は、「足あげて」と言った

ボクは、震えた足を上げた

おじいちゃん先生は、ボクのズボンを脱がした

ボクは、泣きそうだ

おじいちゃん先生は、「よし、行くよー」と言った

ボクは、泣きそうだ

おじいちゃん先生は、ボクのパンツを下ろした。

ボクは泣いた

おじいちゃん先生は、何かを手に取り袋を開けた

ボクは泣いた

おじいちゃん先生は、ボクのお尻を掴んだ

ボクは言った

「やめてください!!先生!やめてください!」と

おじいちゃん先生は、止まって言った

「どうした」

ボクは言った、「初めては美人さんがいいです」と

おじいちゃん先生は言った「そんなの選べんよ」

しかし、ボクは天使のささやきを聞いた

「大丈夫ですよ」と

辺りの空気は一瞬にして和んだ

ボクは言った「優しくお願いします」と

天使は言った「力入れてんじゃねーーーーーーよ!」と

その時、何かが入った。

天使は、天使は、そっちだったようだ

おじいちゃん先生は、笑っている。

ボクは、泣いた。


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