ちょっと大人

えもーしょん 中学生篇 #62

ちょっと大人

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.11.24

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#62
「ちょっと大人」
(2010〜2013/カイト・中学生)

中学3年生の秋、受験がどうとかそんなことはどうでもいいくらい。

ボクは、大恋愛。いや、秘密の大恋愛をしていた。

ある日、隣町の他校の同級生が高校生の彼女とイチャイチャしている現場を

目撃してからボクはすっかり年上の彼女がいる=大人=モテてる。と痛いヤツになっていた

が、当時はそんなこと気にもならない

誰もボクの目を覚ますことなく、ただただ年上の彼女をゲットする事に必死だった

そんなある日、同じ学校の同級生のお姉ちゃんに「可愛い方を紹介して」とお願いするも

「私に紹介して」と、あっさり大人の対応をされ

どうしたもんか…と思っていたら

そのお姉ちゃんから「ご飯を食べに行こう」と誘われた。

が、なぜか待ち合わせ場所は映画館。

そして、ご飯じゃなくて映画を見る事にちょっと不安そうなボクに

お姉ちゃんは、ジンジャエールLサイズとポップコーンを買ってくれた。

それから、映画館に入り席に座った。

ボクはボリボリと手を休める事なく、ポップコーンを食べてジュースを飲み

とにかく、食べて飲む事に集中した。もちろん映画の内容はまったく入ってこない。

なぜって、ボクの右手をお姉ちゃんがムギュッと握っているからだ。

もう、心臓がどうしたらいいのかわからないみたい。

びっくり、嬉しい、なんで? びっくり、嬉しい、なんで?と、永遠ループ。

映画がクライマックスし差し掛かり、ようやく理解。

「これは、もしかして…」

映画が終わり、すっかり夕方になっていた。

「なに食べたい?」とお姉ちゃん。

「んーとんかつ」とボク。

「いいねぇ」とお姉ちゃん。

この映画館に行く時は、いつも近くのとんかつ屋さんでとんかつをお腹いっぱい食べ

そのあとは、7階建ての温泉施設でゆっくりするのが定番のコース。

これは、女の子とでも男の子の友達ともそうだ。

ボクとお姉ちゃんは、とんかつを食べ

「この後どうする?」と聞かれたので

「じゃあ、温泉行こう」とボク。

ゆっくり温泉に入り、休憩場所で2人でかき氷を食べ

ホットドックも食べて、枝豆を食べながら漫画を読んだ。

「なんか、カップルみたいだね」とお姉ちゃん。

「そうだねー」とボク。

岩盤浴で、テレビを見ていると

突然「付き合ってください」とお姉ちゃん。

ボクは、とっさに「内緒なら」と答えてしまった。

あぁ、これはビンタだ…。

そう思って待っていたけど返事は「ありがとう」だった。

こうして、中学3年生の秋ボクは高校2年生の年上彼女をゲットした。

続く


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