ボクと朝焼けと、海と。

えもーしょん 高校生篇 #6

ボクと朝焼けと、海と。

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.01.13

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#6
「ボクと朝焼けと、海と」
(2013〜2016/カイト・高校生)

ある朝、轟々と唸る

波の音で目が覚める。

無意識に、窓を開けた。

暗い、空の中

山の向こうから

かすかに見える、太陽の光が

ボクに、木や葉、花の様子を

見せてくれる。

どうやら、風は吹いていない。

無風だ。

風の無い、夏の朝の湿気だけが

気持ちよく残る、幻想的な朝を迎えた。

外に干していた、海パンは

朝露で濡れているが

轟々と呼ぶ、波の音のおかげで

気にすることは、なかった。

少し、肌寒いボクは

上半身だけのウエットスーツを

自転車のカゴに入れ

ボードにWAXを塗り

海へ向かう。

国道をただ、真っ直ぐ

一度も曲がることなく

ただ、真っ直ぐ走る。

緩むチェーンと段差に気をつけながら

最大公約数で、自転車を漕ぐ

夜明けが先か、ボクの到着が先か

背後に迫る太陽。

だんだんと

自転車を漕ぐ、ボクの影が

地面に写り、伸び始める。

夜明けか、ボクか。

コースは終盤

200mと、いったところか。

どうやら、クライマックスにして

太陽が、本気を出してきた。

暑い、暑い、暑い…。

汗が頭皮から、髪の毛をつたり

眉に垂れる。

目に入りそうな汗

むず痒くいが、片手にボードを

片手に、ハンドルを握っていて

拭たくとも、拭えない。

強く、グッと瞬きをし

自転車を漕ぐ

何度も、何度も。

大きな坂を下り、海が見える

波が、防波堤に当たり

大きな飛沫となって

空に散る。

気持ちのいい風に吹かれながら

坂を下る。

駐車場を抜け

海の家のおばちゃんに

軽く会釈をすれば、到達。

どうやら、今日は夜明けが先だった。

すでに、高い空で

シャンシャンと照りつく太陽が

高笑いをしながら

「はよ、海へ行け」と

ボクに言う。

続く


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