決勝戦

えもーしょん 小学生篇 #15

決勝戦

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.01.31

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#15 「決勝戦」
(2003〜2010/カイト・小学生)

なんと、ついに

決勝まで来てしまった!!!

おおおおおおお!!!

パパも正直、驚いている様子

ここまで来たら、優勝しかない。

いや、絶対優勝する!!!

優勝しなくては!

556を入念に、入念に

スプレーする、パパ

「そんなに、かけて大丈夫?」

「大丈夫でしょ。」

と、ボードを受け取り

コースへ向かう。

友達のカイも応援に来てくれた

決勝まで、ボクが残ったことを聞いて

珍しく、ママまで見に来た。

「ママが見にくると、ジンクスで負けるから」と

ママは言うが、本当にそうだ

ママが応援に来る大会は

大一番で絶対負ける。

こればかりは、どうも

逃れられない運命かもしれない…。

コースへ向かうと

なにやら、大人達が

ごちゃごちゃと話をしていた

なんと、ハンデがなくなるらしい。

ついに、大人が本気になってきた。

スタート地点で、大人と並ぶボク

「こりゃ、勝てん。」

スタートで、振り切らないと

コーナーで弾かれちゃう…

なんとなく、サーフィンと似ている。

作戦は、最初のコーナーは外回り

最後のコーナーは内側で周り

最後の直線で、離す

そんな、作戦。

よーい、パン!!!

ピストルの音と同時に

大人が3人がものすごい勢いで

スタートする

ボクは、2位でスタート

1位の人は少しずるい

コーナーでボクを引っ張るのだ

それでも、負けじと

張り合う…

最後のコーナー

内側に入ろうと思ったところで

後ろのウィールが、ズルン!!!と

滑った。

そう、パパが入念にスプレーした

556が、ベアリングから

溢れて、ウィールについてしまった…

いや、まじか!!!

なんと、3位に。

やばい!!!!!!!

ボクも、ちょっとずるしかない!

最後の直線

チクタクをしながら

わからない程度に

スラロームをした

みるみる、スピードが上がる

みるみる、みるみる

追い上げ

ゴールギリギリ

2位でフィニッシュ。

ゼーゼーハーハー

言う大人たちの横から

カイが言った

「かいと!すげー!!!!!」

「556で滑ったっしょ?笑」

「うん、やっぱわかった?」

と、横でパパが

ゴメン、ゴメンと笑う。

2位の景品は、スケートのデッキと

10回分のパーク入場券だった。

夕方になり

少しは波が上がってきた。

「海行こう」

カイがそう言い

「そうだね。」と

足早に海へ向かった。

大人のエゴと、執念と戦い

なんだか、強くなった気分。

やっぱり、優勝したかったけれど…

ママのせいかな…

ははは。


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