ブロンをゴックン!

えもーしょん 高校生篇 #2

ブロンをゴックン!

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / dec.17.2019

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#2
「ブロンをゴックン!」
(2013〜2016/カイト・高校生)

「宇宙旅行へ行こう、かいと。
ブロンでかっ飛ばそう」

買ったばかりの、バイクで2人
何処へ行くわけでもない。

ただ、バイクで走る。

宛てもないまま、気の向くまま
ただ、走った。

「ボクらには、もう何もない
むしろ、いっそ
無くなってしまいたい……」

「何に、なるんだ」

「なれるんだ」と

情緒不安定、16歳のボク。

隣には親友のこうや。

真夜中の河川敷
ポカリスエットと安いビール
デザートには、咳止めブロンを片手に

ボクらは、3つ程しか見えない星を
見上げていた。

両親の影響で、ただただ
サーフィンだけをして来た、ボク。

両親の影響で、ただただ
ダンスだけをして来た、こうや。

ボクらは
両親の期待と、押し付け
両親の理想を叶える事に疲れた。

ボクらの、中にボクらはいるのか。

闇も霧も光も見えない、青春だ。

憧れていた
ハイスクールミュージカルには、程遠い。

唯一信じられるのは。親友と性欲。
正直なおちんちん、だけだ。

「こうなったら、ブロンっ!」
と寒く、少し鼻の詰まった
声で話すこうや。

ボク「大丈夫なの?」

こうや「平気だろ」

ボク「そか」

かじかんだ手で
瓶の蓋をを開ける。

こうや「最近、どうなの試合」

ボク「うん、もう無理かな」

こうや「何が?」

ボク「それが、わからない」

4月から始まったツアー
ボクはまだ1試合も勝てていなかった。

何かが足りない。

わかってはいるのだけど。

何かがわからず、悶々と

ブロンをごっこん。

ボク「こうやはどう?」

こうや「何の為なのか、わからない
まぁ、でもギャラはいいよね」

もう、彼はダメだ

ロング缶2本にブロン2瓶目。

何を言っても、何を話しても

明日になれば、忘れているだろう。

ボクは、彼が羨ましい。

彼のように、酒と薬に身を委ね

明日になれば、忘れられる。

そんな
人間らしさが、ボクにはない。

ボクには出来ない。

出来るとする共通点は、セックス。

一瞬の快感と終わった後の倦怠感で
闇を忘れられる。

今、ボクが唯一生きていると
実感出来るのは

イク瞬間だけかもしれない。

ボク「ダメだ、ブロン効かないみたいだ」

こうや「へ〜」

ボク「そろそろ行くよ」

こうや「う〜ん、は〜い」

いいよな、まったく。

愛車のモペッドにまたがり
帰路に就く。

右ハンドルを全開に

世界が流れていく。

どんどん、流れていく

木も葉っぱも、人も影も。

オレンジのライン。

白いガードレール。

信号もない、一本道を
ただ走った。

帰宅し、ふと我に帰る。

結局、何考えてたんだっけな。

そんなもんか。

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