Emotion 第46話
青
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.09.26
第46話
空は、青かった。湿度が低く太陽からの光だけが頼りの暖かい日だった。一瞬、日陰に入るととてもヒヤリとしてすぐそこに冬が迫って来ていることを感じた。いつものようになんとなく同じ時間に起きて、原稿のことを考えながら駅前のカフェに向かっていた。なぜか、木の葉が少なくなっている事に気づいてしまって視界に入る緑の量が少なくなっている事に気づいてしまった。空はまだ少し夏の気配を残しているけれど、そんなことを気にすることもなく置いていくように、先に進むように地上はすっかり冬の準備をしていたようだった。
カフェに到着して窓際の席に座った。いつもなら原稿が進まず外をぼんやりと眺めては数行書き。何かを食べては数行書く。そんな時間を過ごしていたがやけにすらすらと原稿が進んでしまって、これでいいのか。と悩む時間さえもあった。このまま、来週の原稿まで進めてしまおう。と何となく話の流れを考えていると半ズボンにArizonaと胸に大きく書かれたパーカーを着たカイトがやって着た。
カイト「よぉ〜」
出版社に勤めている人とフリーランスの編集者の間のような雰囲気と言えばいいのだろうか。そんな雰囲気を感じて仕事に馴染んだのだと感じ少し安心した。
僕「おはよう、休み?」
カイト「そうそう、今日休み。なんだけど、そんな日に限って早起きなんだよねぇ」
僕「わかる」
カイト「何飲んでるの? チャイ!? 珍しいじゃん」
僕「何かね、気分だったんだよね」
カイト「へぇ〜俺も頼もうかな」
彼が歩くたびに、そんなに鍵って沢山持つもの? と感じるほど、腰につけた鍵が重なり合ってジャラジャラと鳴っている。彼がこちらに戻って来ると、それはどこの何の鍵なのか聞いてみた。家の鍵、バイクの鍵、家の中の金庫の鍵、金庫の中に入っている小さい金庫の鍵、オフィスの鍵、自転車の鍵、実家の鍵、実家に停めてある自転車の鍵。と全部で8個もついていた。家に金庫があることに驚いたが、それよりも実家に停めてある自転車の鍵を持って来ていたら両親は邪魔でしょうがなくはないのか、聞いてみると。ずっと倉庫の隅に置いてあるらしい。金庫については触れない方が良さそうな気がして聞けなかった。
原稿も書き終えて、入稿し暇になってしまったので2人で公開されたばかりのミステリー映画を見ながら犯人を当てよう。と2人で映画館に向かう。
続く
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