ダルメシアンの斑点がピンクだったら

えもーしょん 中学生篇 #26

ダルメシアンの斑点がピンクだったら

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.27

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#26 「ダルメシアンの斑点がピンクだったら」
(2010〜2013/カイト・中学生)

薄い、青っぽい空が

だんだんと、暖かいオレンジ色の空になって

桜も散って、暖かくなって来た。

「桜が散る前に、暖かくなったらいいのに」

葉桜の下、ベンチに座って

じゃがりこの蓋を開ける。

呑気な空を見上げ、ボリボリと

じゃがりこを食べる。

「かいとも、春っぽいよ」

と、隣に座るカナちゃんが言った。

「春っぽいって? なんで?」

と、ボク

「なんでって、外でそんな、じゃがりこ食べるなんて、冬にはしないでしょう」

と、カナちゃん

「そうだね、確かに、春だね」

「カナちゃんの、ポカリスウェットがなんか春っぽいね」

「そうだね」

大きな、ダルメシアンが

落ちている、桜の匂いを嗅いでいる。

「ダルメシアンの黒の斑点がピンクだったら、もう、絶対、春だね」

と、カナちゃん

「そうだね」

と、ボク

「春って、どこから春なんだろうね」

「暦に勝手に、決められても、まだ全然春じゃないし! ってテレビに向かって言う時あるよね」

「そうだね」

「毎年、同じこと言ってる気がする私」

「ボクも」

「みんな、不思議に思わないのかな」

「毎年、同じ日に春じゃないし! って言うのにね」

「あ、ダルメシアンが来るよ」

と、カナちゃんが言うと

聞いていたかのように、ダルメシアンが

やって来た。

「おっきいーねー!」

と、ダルメシアンによしよしするカナちゃん

かわいい。

「ボクもダルメシアンなりたい」

とは、口が裂けても言えない。

「ずっと、なに見てるの?ピンクにはならないよ」

と、カナちゃん

「あ、うん。そうだよね」

と、ボク

「君も、春か、そうかい、そうかい」

と、カナちゃん

満足そうに、ダルメシアンが去っていく

「春が来て、梅雨が来たら、夏だね」

「そうだね」

ダルメシアンの後ろ姿を2人で見送る。

「冬の匂いって、あんまりわからないよね」

「そんなことより寒いから」

「でも、春になるといろんな匂いがするよね」

「暖かいし、いろんな花が咲くからね」

「湿度とか、関係あるのかもね」

「でも、何より、お日様の匂いがしていいよね」

と、カナちゃんが言って笑う。

「君を、抱きしめたらそんな匂いがするんだろうな」

と、ボクはまた、言えないことを思う。

「だから、ずっと見ててもピンクにならないよ?」

と、カナちゃん

「もう、なってるよ」

と、ボク

「え?ピンクに?」

と、カナちゃん

不思議そうに、ボクを見つめる綺麗な目が

やっぱりかわいい。

「春だね。やっぱり」


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