大人とは

えもーしょん 小学生篇 #58

大人とは

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.10.21

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#58
「大人とは」
(2003〜2010/カイト・小学生)

“大人とは”こんな授業があった。

わかんないけど、チューしたら大人だと思っていたボクは

そこで、初めてクラスメイトは意外と自分よりも大人だったことを知った。

「電車乗車料が大人料金になったら大人ですね」

ある、男の子が言った。

「電車乗車料? へ?」

ボクは、そのレベルなのに…

「人のことを理解し、思いやりと責任感を持つこと」

なんて、校歌のようなことを言い出す子まで出てきた。

なんだか、考えれば考えるほど自分がバカに思えてきて

考えているより、聞いてる方がよっぽど楽しいなぁ。

と、思ったので

ちょっと、寝てからまたみんなの話を聞こ~。

なんて、うつ伏せになっていると

隣の席に座っている、かっちゃんにガン! と机を蹴られた。

「おい、なにすんだよー」

と、ボクがかっちゃんに文句を言っても

かっちゃんは、無視。

かっちゃんは、近所のちょい御坊ちゃま。

ボクとは仲が悪い。

もともとは、かっちゃんのお母さんとボクのお母さんの仲が

悪かったのがきっかけだけど

いつのまにか、かっちゃんもその冷戦に参加し

もちろん、スーパーマザコンのかっちゃんは

ママの味方をするのでボクは敵になった。

そもそも、ママ同士の喧嘩もかっちゃんの家よりボクの家の方が

好立地で土地の値段が高いという

大人の、妬みから始まったものである。

エリート一家のかっちゃんのお家は小学校を出て商店街を抜けた。

住宅街の分譲住宅。

それなのに、働かないパパとママを持つボクの家は

海が目の前の1番土地が高い場所にあったので

かっちゃんのお母さんが遊びに来た際

ボクのママに、嫌味を言ってしまったことから始まった。

PTAなんか、もちろんボクの家族は参加しない。

が、ここら辺のPTAの代表はかっちゃんのママだ。

そんなこともあり、ボクの家とかっちゃんの家は仲が悪い。

これこそ、今の授業にぴったりだと思うけど…。

と、考えていると

「常に紳士でいることです」

と、かっちゃんが大きな声で言った。

「どの口が言ってんだよ」

と、ついこぼすと

かっちゃんは、見たこともないくらいブチ切れ

「てめーーーーみたいなバカに何がわかんだよ!」

と、泣き叫び襲い掛かる

「ちょ、かっちゃん! 紳士! 紳士は!?」

「うるせええええええ!」

「紳士! 紳士!」

彼も、いろいろストレスだったのだろう。

ママの英才教育の重圧が相当…。

あれから、数年。

かっちゃんは、ちゃんと東大に進学し

ママの、望む息子になった…。

薬物に手を出すまでは…。


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