ステイホーム週間 前編

えもーしょん 大人篇 #32

ステイホーム週間 前編

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.06.09

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#32
「ステイホーム週間 前編」
(2016~/カイト・大人)

さて、さっきまで

えもーしょんの月曜日の原稿を書いていた。

どれくらい、さっきかと言うと

ちょうど、45秒前だ。

ふふふ。

今日は、水曜日

えもーしょんの締め切り日だ。

締め切りの時間までは

残り4時間と15分。

刻一刻と、時間は過ぎていく。

中国から、やってきた

ウイルスは、ボクらの街にも

しっかり、やってきた。

そして、しっかり

爪痕を残していった。

朝、まい泉は散歩していて

なかなか、友達と遊べなくなってしまった。

自然界に生きる、動物までも

ボクらの、ウイルスのせいで

ストレスを感じさせてしまう事に

ごめんね。と思うが

こればっかりは、ボクがどうにか

出来る事じゃないんだ。

と、まい泉に語りかける。

大きな、道路を歩いても

人気がない、この道をまっすぐ進めば

目黒駅のはずなのに

人気がないのだ。

人が、いないのに

どうも、人間の狂気的な気配を

立ち並ぶ、家の中から感じている。

なにか、起こるのではないか。

まぁ、いっか。

ボクとまい泉は今日も2人で

部屋の中から、世界を眺める。

我が家には、テレビがないので

詳しいことは、わからないが

どうも、まだまだ事態は

収束しなそうだ。

それよりも、スーパーがひどい。

人混みを避けよう。という

呼びかけに、真っ向から

歯向かうように

物凄い、数の人が買い物をしている。

棚には食材はなく、大きなカートを持って

沢山の人が、彷徨っていた。

元々、人混みは苦手なので

仕方なく、近くのコンビニへ行くと

スーパーよりも、食材が揃っていて

なーんだ、やっぱり

コンビニは優秀ね。

なんて、いって

割高な食材と、調味料と肉まんと

お菓子を買ってしまった。

なんか落ち着かない時は

肉まんを食べる事にしている。

肉まんの安心感は凄い。

あの、白くてまん丸で

柔らかくて暖かい

まるで、おっぱいのよう。

しかも、そんなフォルムの中に

出汁の効いた、具がゴロゴロ入っているのだ。

ボクは、肉まんを半分に割って

フワフワな生地と中の具を

同じ比率で食べるのが好きだ。

今の気温にはミスマッチだが

食べて、幸せになれるなら

問題ない。

特に、買い溜めもせず

ボクのステイホーム週間が始まった。

それから、何日かは

すぐに、終わるだろう。

と、思っていたので

なにも考えず、とりあえず家にいよう。

そう思い

珍しく、同じような日々を繰り返した。

朝起きて、散歩をして

朝ごはんを食べて

ネットを見て

昼寝をして

原稿の事を考えて

絵を描いて

夜ご飯を作って

食べて

ゲームをして

眠る。

本当に、これだけを

2週間ほど、繰り返した。

その頃から、朝の散歩に出ると

マスクをして、ジョギングをする人達が

増えてきた。

最初は、なんだかすみません…。

というように、しっぽり

ジョギングをしていた人達が

日に日に、ドヤ顔でジョギングをするようになり

子供まで、外で走るようになった。

あれま、みんなもう限界ね。

こうなると、だんだんと

みんなの中に、大丈夫じゃないか?

という隙が生まれ始めるのだ。

いや、隙というよりも

慣れだろうか。

人間は本当に、環境の変化に敏感だ。

変化にびっくりしてしまって

つい、感情的になるのに

少し経つと、慣れてしまうのだ。

なんとも、恐ろしい。

感情的になった時に傷つけてしまったものは

元通りにはならないというのに

自分だけ、慣れてしまうのだ。

コンビニのレジに貼られたビニールカーテン。

初めて、見た時は

もう、映画の世界だなぁ。

なんて、思って少し

悲しくなってしまったのに

今は、無い方が不審に感じてしまう。

そればかりか、ない事に

抵抗や、不安を感じてしまうのだ。

コンビニや、スーパーのレジ前に貼られた

ソーシャルディスタンスのテープもそうだ。

もっと、言うと

マスクがそうだ。

つい、1ヶ月前まで

マスクをして、挨拶をすると

怒られたのに、今はどうだろうか

マスクをしていないと、白い目で見られ

お店には入店拒否されるのだ。

なんてこった。

そんなに、勢いよく変わっても

ボクは、ついて行けないよなぁ。

そう思って過ごしていたのが、

前半である。


アーカイブはこちら。
小学生篇
中学生篇
高校生篇
大人篇

Tag

Writer