『富士フィルム』のデジタルカメラ

Just One Thing #27

『富士フィルム』のデジタルカメラ

Cera Gigi(モデル)

Contributed by ivy -Yohei Aikawa-

People / 2023.03.09

 街は、スタイルが行き交う場所だ。仕事、住む場所、友だち、パートナー、その人が大切にしていることが集約された「佇まい」それこそがその人のスタイルだと思う。
 絶えず変わりゆく人生の中で、当然、スタイルだって変わる。そんな中でも、一番愛用しているものにこそ、その人のスタイルが出るんじゃないかって。今、気になるあの人に、聞いてみた。
「一番長く、愛用しているものを見せてくれないか」


#27


「休みの日は新しい人に会ったり、知らない場所へ行ったり。私は、自分自身が成長するために時間を使いたくて、何もしないでいることが嫌なんです。新しい人に会ったら、その人のいいところを探して、それを自分に取り入れるようにしています」

語尾がはっきりとした話し方だった。それでいて、自分の考えを言葉にするとき、笑顔になる。声と目で会話する人。それは、聴き手としてはこれ以上なく信頼できて、且つ親しみの持てる語り部だ。



モデル、Cera Gigi(セラ・ジジ、以下セラ)との待ち合わせは高円寺。2月の終わり。年中あまり景色が変わらない、南口のアーケードを初春の風が吹き抜けて、道行く人がコートを脱ぐ頃だった。この日のセラも、スタンドカラータイプのツイードジャケットの下には薄手のブラウスとカーディガンを着て、首元のチョーカーのターコイズがどこか涼しげ。気分はもう春、待ちきれないといわんばかり。

古着屋や「○○屋」と定義しがたい不思議な店が数多く集まるこの街は、東京都内の知らない街を歩き回るうち見つけた、お気に入りの場所の一つだという。

「地元は、町田です。東京だけど、都心から離れているから、そこで生活しているとあまり他の場所に出ることがなくて。東京に住んでいるのに、東京のことを知らないなんて!と思って、あちこち散歩するようになったんです」

軽やかな足取りで裏路地を進む。少し先を歩く彼女は何かを探しているような、好奇心に満ちた目をあちこちに向けていてどこか忙しない。きっとこの街には何度も来ているはずだけど、また新しいものを見つけているんだ。

「あ、見て見て!このビル、私みたいじゃないですか?(笑)」




唐突に立ち止まったセラは、片手に収まるくらいのカメラを取り出して、おもむろに目の前の景色に向けてシャッターを切る。深いターコイズブルーで手塗された小さなビルは、テナントがわからない不思議な佇まいをしていた。散歩で見つけたお気に入りの場所らしい。

「カメラはスマホ感覚でいつも持ち歩いています。特に何を撮るとかはあまり考えていなくて、日常とか友だちとか、素敵だなって思ったものを撮るようにしています」




何を隠そう、『富士フィルム』のコンパクトデジタルカメラがセラの愛用品。彼女が新しい人に会うとき、知らない場所へ行くとき、カバンやポケットにいつも忍ばせている。

「カメラを持っていると、新しい人と出会うきっかけになるんです。この前も知らない人がたくさんいるパーティーへ遊びに行ったとき、写真を撮ってたら『撮ってあげようか』って話しかけてくれた人がいて。これ、インスタのリールに載せているんですけど『Thank you 2022』って。去年出会った人との写真をまとめました」

短いリール動画に登場するセラの仲間たちは、国籍もファッションスタイルも年齢も世の中を区切るあらゆるものが陳腐に思えるくらいカラフルで多様性に富んでいる。当たり前だけど、みんな全く違う表情をしていて、それをポーズやファッション、全身で表現している。セラのフレンドリーな人柄が目の前の相手の自然体を引き出しているのかもしれないし、そういう自分を当たり前に表現できる人が彼女の周りに集まるのかもしれない。

「私、15歳までは人見知りで、アンフレンドリーだったんです…。英語も話せなかったし、学校には友だちもいなくて。モデルをやるようになってから、社交的になれたと思います」





今のセラを見ていたら、全く想像はつかないけれど、彼女は今とはかなり違ったみたいだ。モデルへのはじめの一歩は彼女にとって大きな転機だった。モデルを始めた、16歳の頃。といってもそれは、ほんの2年ちょっと前だけど。

「一昨年のクリスマスイブに、『ミヤシタパーク』のフードコートにいて。ある外国人と思わしき4人のグループがすごくかっこよかったんです。絶対、友だちになりたい!と思って話しかけて。それまではそんなこと、したことなかったんですよ」

その4人組はセラが読んでいたファッション誌のモデルとも友人で、雑誌関係者やフォトグラファーをしている人たちだった。2年間のうちに、モデルを本業にしていくまでの間、彼らから受けた影響はあまりに大きかった。

「すごく憧れている、かっこいい人たちだけど、みんなフラットに、同じ目線で話してくれたんです。その人たちと遊んだり、話していたりするうちにモデルが身近な存在に思えてきました。最初は事務所にも入らずにインスタにスタイルを載せて、だんだんフォトグラファーが作品撮りに誘ってくれるようになって」

かっこいい、素敵、友だちになりたい。そう思っても、話しかけられなくてその場に何も生まれなかった。そんなすれ違いは、案外ごく日常で起きているように思う。人見知りだったセラが自分を変える大きな一歩を踏み出すまでにその背中を押してくれた存在はなんだろう…。気になっていたら突然、セラが目を大きく見開いて、何かが弾けたように一気に話しだした。

「あ、そうだ!思い出した。うん、そう。私が社交的になれたのもカメラを持つようになったのも、同じ友だちからなんです。歳が一個上の友だちがいて、最初は私がインスタで一方的にフォローしてて。カメラで撮った日常の写真を載せてたのがすっごく素敵で、私も撮ってみたいなと思って、デジカメを買ってもらいました。会ってみたら、その子はすごく社交的。私もその子のいいところを自分のものにしたいと思って、仲良くなりたい人には自分から話しかけるようになりました」

カメラが彼女にとって、人生の扉を開く最初の鍵だったのかもしれない。今のセラを形作る、色々な人の「いいところ」とか、面白い場所とか、楽しい時間とか。セラが街を歩いて見つけた宝物たちが詰まっているのだから。




彼女は、周囲の人のことを話すとき、自分のことを話すかのように楽しそうに話す。それは、大切な周囲の人の存在こそが、セラ自身の今の姿でもあることを心から誇りに思えていることといい換えられる。

「ナルシストとは違うけれど、自分が大好きです。いっつも、自信満々だと思います。だから、自分を表現したい。モデルをする前から、ちっちゃいときから、周りと自分が違うことを自覚はしていたけど、そんな自分自身を表現することは自然にできていたと思います」




自分を愛せるからこそ、目の前の相手を愛せる。「人間」が好きな人なんだ。そんなセラに自分の好きなところを教えて、って聞いてみた。

「いっぱいありますよ(笑)まずは、良くも悪くも単純なこと。起きたことをあまり深く考え過ぎないで、すんなりそのまま受け入れられます。それに、何事も恐れない。わからないこととか不安なこともまずはやってみよう、って思えるから。コミュ力はある方だと思うし、あとはやっぱり人のいいとこを見つけられること!」

ここまでの話がこの言葉にまるっと集約されている。

「モデルをしていると、色々な自分に出会えるのが楽しい」
と語っていたセラ。そこで表現されるセラは、カメラを持って出会った人、写真を撮った人、撮ってくれた人、そして彼女自身。それら全てだ。これから出会う新しい人、そして新しい自分を彼女はまだ知らない。そのことすら、セラは楽しげに思っているはずだ。


アーカイブはこちら





Cera Gigi(モデル)
東京都町田市出身。母親が日本人、父親が日米ハーフのクォーター。現在はアルバイトをしつつモデルとして活動している。趣味は都内の知らない場所を一人で歩くこと。お気に入りの場所は代々木上原、そして高円寺。
Instagram:@cera_gigi

Tag

Writer