海と街と誰かと、オワリのこと。#35
不思議な世界
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.03.07
暖かい光に照らされた東京の密度の高い景色から、1日がスタートする。彼女のさきが朝ごはんを作ってくれている間テレビのニュースを見ている。
ーーーーお天気おねえさんの声
「今日の最高気温は27度ととても気温が高いですが、夜になるとグッと気温が下がるので寒暖差に注意して下さい」
今日はそんなに暑いのか、さきに伝えようと彼女の方へ向かう
僕「今日の最高気温27度だって」
さき「暑っ、もう夏だね」
さき「これ持って行ってくれる?」
さきに料理を渡されテーブルへ運ぶ
僕「今日はTシャツでいいね」
さき「そうね、オワリの服洗濯してあるよ」
僕「ありがとう」
さき「オワリ、今日バイト終わったら何するの?」
僕「うーん、何も予定はないから帰って漫画読むかなぁ」
さき「私、今日最後の撮影中目黒なの6時くらいに終わりそうだからお茶しない?」
僕「うん、いいよ」
さき「じゃあバイト終わったら連絡してね」
僕「了解」
2人で朝ごはんを食べているこの時間はとても幸せに感じる。ひとり暮らしが始まってから誰かとこうして朝食を取ることはなかったから。出掛けた先のホテルのモーニングや、お店で食べる物とは比べられない。やっぱり家で食べる朝ご飯は特別なんだ。と感じた。それに僕はとても運の良い人間だ、可愛い彼女を眺めながら、彼女が作ってくれたご飯を食べている。
まるでテレビを見ているかのような感覚だ。目に映る景色は映像で体の中からモニターを見ているような感覚がしている。寝ぼけているせいかもしれないけれど、とにかく楽しいし幸せだから何でもいいや。
ご飯を食べ終わり、さきが支度を終えるまで食器を洗って洋服に着替え待っている。
さき「お待たせ」
僕「全然」
さき「オワリ、これ。はい」
さきがキーホルダーを持っている
僕「なに?」
受け取ると、それは鍵だった
さき「無くさないでね」
僕「いや、受け取れないよ」
さき「何で?」
僕「何でって言われても、そんなまだ知り合ったばかりだし」
さき「そうか。初めての合鍵が断られるとは。。」
彼女は一体何を考えているのだろうか。自分の家の鍵って夫婦でもないのに渡してもいいものなのか。それが東京の常識なのだろうか、互いに故郷を離れ上京した者同士が東京という全員が他人の世界で助け合うために生まれた常識なのかもしれない。ポジティブに考えたら、それはあり得そうだ。正直僕も夜中に偏頭痛で目が覚めてこのまま気絶したらどうなってしまうのだろうか。と不安になったことがある。だとしても、ちゃんと何のために受け取るのかハッキリしないと受け取れない。
続く
アーカイブはこちら