えもーしょん 小学生篇 #66
日々
2003〜2010/カイト・小学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.12.07
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#66
「日々」
(2003〜2010/カイト・小学生)
手先が痺れる冬の日、レンガの商店街を歩く。
学校から帰っている。
同じ間学校の子達がキャピキャピと仲良く帰るなか
ボクはふと、いつも1人で帰っていることに気がつく
「誘われ……てないな」
小学2年生から使わなくなったランドセル、バックになると同時に
下校する友達が居なくなった…。
「まぁ、別にいいけど」
VANSのスリッポン、ボルコムのデニム、ハーレーの首が伸びたTシャツ(蛍光オレンジ)。
今日はボクの好きな組み合わせだった。
誰かに見られたかったけど、みんなは全然気にしない。
ハーレーのTシャツよりも、ナイキのジャージの方が人気。
ボクの好きな女の子にモテるためには、ナイキのジャージを着ないと
話にならないようだ。
それに、モテるためにはやっぱり休み時間にグラウンドへ出ないと…。
「いや、でも20分じゃん? 移動で往復4分だとするじゃん?」
「16分だよね?」
「16分、サッカーしてもボール回ってこないじゃん?」
「ドッジボールはしたくないじゃん?」
「縄跳びは汗かくじゃん?」
「やっぱり、暖房がある図書室だよねー」
心の声との会話に、自分がどれだけもやしっ子なのかを知る…。
「はぁぁぁぁぁぁぁあん! 本当はお家で一生寝てたぁぁい!♡」
「科捜研の女とか見てずっと、ずっとゴロゴロしてたいのぉ~♡」
「学校なんて行きたくないのぉぉぉ~♡」
「ブタメン食って、ニキビ出して痛いから学校行きませーん! って言いたぁーい♡」
「やだ~! なんかちょっと大人~!♡」
通りの反対側の恐らく2年生の女の子達が引いている。
そうか…こんなだからみんな一緒に帰ってくれないのかも。
「ここで我を守るか、みんなに合わせ流されるか…」
「芯の強さを試されるぞ」
「でも、ボクも一緒に帰ってゲームしたりしたい」
「遊戯王も遊び方くらい知りたい…」
「いや、でもすぐ飽きちゃうと思うし行くのがめんどくさい」
「お家に帰ったらもう出たくない」
「いやいや、でも放課後グラウンドで集合ね! オッケー! って言いたいし言われたい」
「んんんんんんんん~!」
「もどかしい!」
近所のコンビニで遊戯王カードのレアを出そうと同級生が奮闘している。
ホログラムのカードは、袋を擦った時少し違うらしい…。
ボクもあんな風に遊んでみたいなぁ。
家の布団からは出たくないけど…。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!