New kid on the block. #5

世紀の大発明。

Contributed by Ryo Sudo

People / 2020.07.13

anna magazine編集長・須藤亮がステイホーム中に考えたことと、すこしだけ旅の思い出。

#5



「バファリンの半分は、優しさでできている。」ってコピーは、広告史上に残る大発明のひとつだと思う。ぼんやりした天気だからなのか、少し頭痛がしたので、ひさしぶりに薬箱をがさごそ。バファリンを見つけて、久しぶりに有名なキャッチコピーを思い出したのだ。

僕の家ではずっと、頭痛といえば「バファリン」だった。風邪薬は「ジキニン」だし、整腸剤といえば「ビオフェルミン」。鼻づまりなら「ヴィックスヴェポラップ」、虫刺されといえば当然「ムヒ」で決まりだ。風邪とか腹痛とか、かなりの頻度で出現する体調不良の場合、飲む市販薬のラインナップはたいてい決まっているものだ。

よくよく考えてみると「成分」を気にして薬を購入することってほとんどない。そもそも体調が悪いからゆっくり成分を確認するのも面倒だし、体調がイマイチな時にそばにいて欲しいのは、エッジが効いててアグレッシブな「友達」よりも、すべてを包み込むような優しい「お母さん」的存在だ。

「カラダにピース! ジキニン。」
「男は黙って、ヴィックスヴェポラップ。」
「腹いた一番、電話は二番、三時の薬はビオフェルミン。」
「お、ねだん以上。ムヒ。」

もしそれぞれの薬のCMがこんなキャッチコピーだったら、たいていの人が飲むのをためらうに違いない。

「やめられないとまらない、バファリン。」

このコピーを見て薬を飲みたくなる人は、もう別の病気を疑ったほうがいい。ずっと昔、近所に、ビオフェルミンをラムネみたいにボリボリ食べる男の子はいたけどね。

つまり常備薬に求められているのは、「世界を変える」ようなワクワク感とか「今までどこにもなかった」ような新鮮さとかじゃなくて、昔も今も、「お母さん」みたいな「安心感」なのだ。お母さんって、偉大だね。



「バファリンの半分は、やさしさでできている」。包み込むような安心と、安定感のある効能。どんな薬にも絶対に求められる2つの特長を完璧に表現したこのコピーは、どこからどうみても完全無欠、パーフェクトな「世紀の大発明」だと思う。

そういえば小さい頃よく飲んでた「宇津救命丸」。ところで、「かんのむし」って何?


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