ついに来た!来たぞ!

えもーしょん 高校生篇 #40

ついに来た!来たぞ!

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.07.03

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#40
「ついに来た!来たぞ!」
(2013〜2016/カイト・高校生)

御宿を抜け

部原を通過。

「かいどぉぉぉぁー」

風にかき消されて、聞こえない。

こうやがなにか言っている。

「とうしたぁぁぁぁぁ?」

「ーー〜ー〜いいのー?」

「なにが!?」

「ーー〜〜ック!」

「んんんんんんー?」

「波チェック!!!」

「いいいいいいい!!!」

「オッケー!」

バイクは、走る。

ボクは、後ろで彼の大きな背中と

大きな海を眺めては

どうでもいい会話をしている。

これが、青春か。

彼のパンツはでかい。

Tシャツもでかい。

ナイキの、シャワーサンダルを履いている。

ふふふ。

思わず、笑ってしまう。

典型的な、夏を見ている。

目の前に、広がっている。

なんだか、いい気分だ。

部原を通過すると

勝浦の方へ。

海沿いを離れ

バイパスを通ると

マリブが見えてくる。

「結構サーファーいるね〜」

「そうだね〜」

「どうする? 見る?」

「いや、いいよー! 伊勢海老行こう!」

「了解〜!」

ぶぉぉぉぉおおおぉおぉん。

マリブを越え

松部を越え

勝浦坦々麺の名店を越え

もっと、もっと南下。

「かいと〜! この辺だっけ?」

山道をくねくねと走り

人気がなくなった

とある、入江。

そこには、手付かずの自然と

恐らく

人間を見たことがない魚や貝の楽園が広がっている。

ボクの家族の、特別な場所だ。

「気をつけてね!」

岩場を歩くこうやに、声をかける

「はーい!」

「うぉぉぉぉぉぉ! でけえ!!!」

突然、こうやが大きな声で叫んだ

「どーしたー???」

「でっかい! うつぼ!!!!」

「初めて見た!!!」

「絶対、手で触っちゃダメだよ!!!」

「はーい!」

そう言って、やる気満々のこうやは

さらに、奥の方へ

「かいとー! ここ? だっけー?」

岩と岩の間

ちょうど、潮の流れが止まっている場所がある。

そこから、飛び込み

沖へ泳いで、素潜りをするのだ。

「そう! そこだよ!」

「はーい!」

「ん?」

「ん?」

「あ、ちょっと待って!」

こうやが、こちらを見て

来るなと、合図している。

「大丈夫?」

「しー!」

「ん?」

「あ、かいと、サーフィン行こう!」

「どうした?」

「見てこれ!!!」

なんと言うことだ。

彼の片手には大きく暴れる

大きなエビが…。

「やばくない!?」

「もう、ここにいたんだけど!!!」

「うん、帰ろう、海行こう」

「ボクはサーフィンするから…」

「オッケー! おれラーメン食べるわ!」

夏のえもーしょん。

エンドレスサマー。


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