What is your color?
「個性」ってなんだ?
Photo&Text:中村福時
People / 2022.12.16
Luke magazine special contents #6
今、僕たちが考える「個性」のこと。
多様な価値観に触れる機会が多い今、「個性」という言葉の捉え方もさまざまだ。自分を奮起させるポジティブな言葉にもなれば、時に自分を惑わせる言葉にもなる。今回は服飾専門学校で日々自分らしさと格闘する17名の学生が、「個性」について改めて考えてみた。10代と20代のはざまに生きる学生たちの素直な言葉たち。「個性」ってなんだっけ?
My colour is...
個性は⾊イロ
僕のいろって⼀体なんだろう
僕は幼い頃、家で⺟に英語を教わっていた。⼩学校に⼊学してからその年の夏頃までの数ヶ⽉という短い期間だったが、夫婦共働きで、⼀緒に過ごす時間があまりなかった⺟との数少ない思い出の⼀つだ。
⺟が“colour”という単語を教えてくれた⽇をよく覚えている。CDプレイヤーでシンディー・ローパーの“true colors”という曲を流し、僕に歌ってくれた。そして僕が綴りを練習していたノートに歌詞を書き、歌の意味を訳して教えてくれた。美しく、温かい記憶である。
僕が通っていた⼩学校では英語の授業があったのだが、短い間とはいえ、⺟から英語を習っていた僕は、当然得意科⽬だった。いつも先⽣に褒められ、クラスメイトからも英語が得意な奴と、⼀⽬を置かれていた。
ある⽇の授業の中で“favorite”という単語を使い、短い⽂を作り、発表するというものがあった。僕はいつも通り⼀番に⼿を挙げ、⿊板に“My favorite colour is blue.”と⾃信満々に書いた。先⽣は「よくできました」と褒めてくれたが「でも、ここに“u”はいらないよ」と⿊板の“colour”の⽂字の“u”に⾚いチョークでバツをつけた。叱られたわけでも、揶揄われたわけでもないのに、僕は悔しさと恥ずかしさで顔を真っ⾚にして俯いていた。家に帰り、僕は間違った綴りを教えられたせいで恥をかいたと⺟を責めてしまった。裏切られたような気持ちだったのだろう。⼤した出来事でもないのに、それがきっかけで⺟との思い出のノートを捨ててしまった。
“colour”という綴りが間違っていないと知ったのはそれからずっと後のことだったが、この出来事を思い出し、僕はひどく後悔することになる。
知らない⼈のために⼀応説明しておくと、⾊を表すカラーという英単語はアメリカでは“color”と表記され、イギリスでは“colour”と表記されるのが⼀般的である。その為、この2つはどちらも正しいのだ。
個性とは何か、きっとそれは“colour”の“u”だと思う。あるのもないのも、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているなんていうことはない。⼈や場所によって出てきたり、引っ込んだりする。そして、あってもなくてもどっちも正解なのだ。どっちも“true”なのだ。
⾃分の個性を隠さずに⽣きていたら、その “u”にバツをつける⼈に出会うこともある。そういう⼈は、英語の綴りなんかよりも多様に広がる⼈間性というものを知らないだけで、そこに真実なんてない。
出してもいい。隠してもいい。あってもいい。なくてもいい。真っ⿊でもいいし、真っピンクでもいい。熱くても、冷たくても、⼤きくても、⼩さくてもいい。⾒つからなくても、どこかに無くしてしまってもいい。みんな持ってるし、みんな持ってない、“colour”の“u”が個性なんだと思う。
それは⽂字通り、ユー(あなた)次第だ。
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中村福時
⽂化服装学院ファッションプロモーションコース。デザイナーを志して⼊学したが、現在はエディターを⽬指している。趣味は読書で読んだ本にわかりやすく影響される。最近スピリチュアル系の本を読み、ヨガを始めた。