わかってないね

えもーしょん 高校生篇 #36

わかってないね

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / jun.29.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#36
「わかってないね」
(2013〜2016/カイト・高校生)

夕日に染まる、緑の芝生

大きな噴水の横の小さなベンチで

君が寝ている。

「そんなところより、芝生の方が気持ちよさそうだよ」

と、ボク。

声がしたのでこちらをチラッと片目を開けて見ている。

あぁ、かいとか。

んもぅ、うるさいなぁ。

彼女の心の声が聞こえた。

「こっち、」

ん?

君がなにかを言った。

「こっち」

あ、あぁ

彼女の方へ近づく。

君は、ボクが近づくことを感じて

ボクの座るスペースを少し作る。

まだ、目は閉じ大きく呼吸をしている。

本当に小さな

お尻が少しはみ出るほどの

小さな、彼女が作ったスペース。

小さなベンチの小さなスペースに

ボクは座った。

トントン。

ボクの膝を彼女が触れた。

「どう?」

目を閉じたまま、君が言った。

「どう? ってなにがどう?」

「わからんか…」

少し呆れた様子と、自慢げな君は

ベンチの下の

茶色いローファーを履いて

ようやくこちらを見た。

「おはよう」

夕日に照らされた

綺麗な、瞳で。

「噴水の音が気持ちいいね」

涼しげな顔をした君。

「そういうことか」

やっと、わかったふりをして

わからないボク。

君がこちらを見て

にこりと笑う。

ボクの目の奥を見て

「わかってないね」

そう言っている。

「噴水のアルファー波」

囁き声で君は言った。

「アニメの名前?」

「わかってないね、かいとくん」

君はそう言って

ボクの手を取り、噴水の側へ向かう

「ほら、これだけ近くに来ると汚いでしょう。この噴水も」

「でも、あっちのベンチに座って見ていると音も景色も心地よく感じるのよ」

「それが、噴水のアルファー波」

「わかってないなぁ」

全然、わからない。

けど、かわいい。

単純なボクと頭のいい君。

いつも、君の背中を

大人になってゆく君の背中を

そっと、ゆっくり追いかけて。

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