海と街と誰かと、オワリのこと。#15
段ボール
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.01.31
家に帰ると、家族は起きていた。のんびりテレビを見ながら朝食を食べていた。引越し当日は慌てたくないから、荷造りは完璧に済ませていた。家具はネットで注文して今日東京の家に届く予定だから、引越し屋さんには頼まずお父さんと車で段ボールを3つ持って引っ越すだけだ。家具がないせいか、あまり実感がない。ちょっと長めの遠征に行くくらいの気持ちだ。
父「おー、おはよう。準備できたら行くか」
母「渋滞する前に出たほうがいいよ、今日は疲れると思うから」
父「天気が良くてよかったよな」
僕「準備はできてるから、いつでもいいよ」
父「はやっ、お父さんちょっとお風呂入るから待ってて」
母「え、早く出なくて大丈夫?」
父「別に1時間半くらいだから大丈夫だよ」
と服を脱ぎながらお父さんは言った、運転する本人が大丈夫なら大丈夫だろう。
母「お父さん、荷物が届く時間忘れてるよね」
僕「多分ね。」
母「荷物受け取れなかったら、オワリ床で寝ることになるのにね」
僕「そうしたら、営業所まで取りに行ってもらうよ」
母「そうね、あの部屋夜は寒そうだもんね」
僕「窓が大きいからね」
お父さんがお風呂から出る間に、部屋にある段ボールを車に運ぶ。洋服と書かれた段ボール、漫画と書かれた一番重い段ボール、その他と書かれた文房具類の入った段ボール。この3つとともに、いざ東京へ!
しかし、車に運び終わってもお父さんはお風呂から出てこない。痺れを切らしたお母さんが
母「いい加減に行きなよ」
とお風呂のドアを叩いた。
父「だいじょーぶだよ、そんなに焦らなくても」
母「荷物届くの忘れてるでしょ」
父「荷物、ああそうだったヤバイな」
母「ほら、早く行きなって」
お母さんはお風呂場からこちらにやってきて
母「オワリ、もう車に乗って待ってなさい」
そう言ってお父さんの着替えを取りに行った。言われた通り車に乗ってお父さんが車で待つことに。エンジンだけお母さんに付けてもらって、さっきまでリビングで見ていたテレビの続きを見る。しばらくすると、クッキングの番組が始まった。あと30分で東京の家に荷物が届くけど、僕はまだここにいる。
ーーお父さんが、やっとやってきた。
父「そろそろ行くか」
母「気をつけてね」
僕「はーい」
涙の門出とはならない、こう言う旅立ちは遠征で日常茶飯事だったからだ。じゃっ、と家を後にした。
続く
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