ありがとうバルセロナ 

the UNKNOWN #5

ありがとうバルセロナ 

Contributed by Miyu Fukada

People / 2024.01.10

心の片隅でずっと恋焦がれていた場所、南米。その地に惹かれ続けた理由を確かめるべく、写真家Miyu Fukadaさんが再び当てもない旅に出た。はじめて訪れる地で過ごす、まだ誰も予測できない出来事をリアルタイムでお届け。

#5


1/1



今日から2024年!
辰年
私は辰年生まれの年女!

お正月にはかねてからモンセラットに登りたいと思っていた。
当初の予定では朝イチの電車に乗って初日の出を見に行きたいところだった。
が、天気予報が曇りなので見れないだろうと行くかどうか迷っていた。

すると、大晦日にナチャから連絡があった。
「自然の中にいたいし私も行きたいから行こうよ!」と。


元旦当日 
朝起きると、
夜中の1時過ぎにナチャからメールが来ていた。
「今家に帰ってきたから11時に待ち合わせね!」
10時に待ち合わせしていたけど帰りが遅くなったらしく
時間をずらして欲しいという連絡だった。
 
起きたら曇り。
うーーーん。
行きたいけど天気がなあ。
そしてあんまり遅くなると夕方寒くなる気がした
理想は9時出発だった。

でも今日は元旦、市内にいても特にやることはないので
まだベットにいる相棒も急かして一緒にいくことにした。

結果、

行ってよかった!!!!!

モンセラットは3年ぶり、3回目。2020年6月と、2021年の元旦に
ナチャとナチャの当時の彼と一緒に行ったのを覚えている。
ナチャは忘れていたけど(笑)。

モンセラットにはナチャの友達ぺぺがいて
愛犬ボーダーコリーのパンダと暮らしている。
ぺぺがモンセラットの数駅手前でピックアップしにきてくれた。
久しぶりに会うぺぺ。
会うのをすごく楽しみにしてくれていた。
パンダも覚えててくれたみたいで、道中は木の棒を投げ合い、遊びながら。

市内は曇りだったのにモンセラットは太陽が出ていて、気持ちが良かった。空気も美味しい。
一年の初めをこうやって過ごせて良かったな。
モンセラットは元は海の中だったらしい。
ぺぺが教えてくれたんだけど(ぺぺはロッククライミングをする)
上の方まで登ると貝殻など海の化石? が見つけられるそうだ。

不思議な場所
エネルギーを感じる場所だ。





1/2



スペインは新年感はない。
オフィスワークの人たちは今日から通常運転らしい。
天気もよくないので特に外にも出ず、家でダラダラ。
日本でのニュースを見た外国人の友達数人から大丈夫? と
連絡をもらい羽田空港での事故のことを知った。

元旦から日本は大変そうだ。
私は現在スペイン。
一緒に心を痛め沈んでも何にもならない。
だったらこっちで目の前のことを精一杯やろうと思った。
それは毎日をしっかり生きるということ。


午後から今晩の餃子の準備に取り掛かる。
焼くのはうまくいった。
が、スペインのひき肉はなぜだかジューシーさにかける。
これは焼きより、水餃子の方が良さそうだ。





1/3



ここ3日間バルセロナの空模様はグレー
ゆっくりなスタートな1月

マリアナと撮影したネガを現像に出しに
40分くらい歩いていつもの写真屋さんに。

いつも通らない道を選んで歩いてみた。
バルセロナは小さくコンパクトだけど
実はまだまだ知らない通りがあることを知った。

ここ3、4年バルセロナに飽きていたんだけど
次に戻ってくるのがいつかわからなくなった途端に
急に恋しくなった。

なんて天邪鬼な自分。
ずっと同じ場所にいるとルーティーンが決まってきて
それ以外を探検しなくなる。
バルセロナはいつしか私にとって日本と同じような
立ち位置の場所になっていた。
見たことのある景色
知っている通り
行ったことのあるレストラン
初めは新鮮だった街も
1年半住み、毎年1ヶ月以上戻り、通い続けていると
こうなるのかと。
自分の視点次第でこれは変わる。
飽きっぽい私はそこがなかなか難しい。
でももっと深く掘ったら何か変わるのかも。

写真もそうだ。
撮るのに飽きたことは今までに数回経験してきた。
でも自分の向き合い方を変えれば何かが変わるのかもと
色々やってみたと思う。
カメラを変えたり撮り方を変えてみたり。

同じような毎日だったとしても同じ日は1日としてない。

わかってはいるけど意識的にそういう思考のクセをつけないと
毎日がダラダラする。

意識しないでも勝手に変化が起こるのが旅
だから私は旅が好きなのかもしれない(笑)。





1/4



今日は私がバルセロナを大好きな理由大きな2つを書くことにする。

1.自由 
自由と一言で言うとよくわからないと思うので細かく記録する。
例えば夕方日暮れどきに通り沿いのカフェに目をやるとクロワッサンとコーヒー
朝みたいなセットを食べている人がいる。
そうかと思えば朝の市場では朝8、9時からビールを飲んでいる人も。でも周りはそれについて何か言う人もいなければ、変なのあの人とか呟く人もあまり見かけない。
周りは全く気にせず自分がしたいように自由にやりたいこと、着たい服、食べたいものを選択し、楽しんでいる。それがここでは当たり前なこと。そういう環境に身を置くと自然に自分の本来の姿を思い出したように周りを気にせず自然な姿になる気がする。

2.挨拶
私がこちらにきて不思議だなと思ったのは、日本では小さい頃から挨拶しなさい、挨拶が大事と言われて育ったけどそういう光景はあまりみない。逆にそういう人がいるとああ、良い人だななんて思ったりする。こっちではお店に入ればHolaというし
カフェでコーヒーを頼むときに最初にHola Buenasと挨拶したり日本ほど機械的な感じがせず、店を出る時はありがとうと言ってから出たり、電車から降りる時人がいれば当たり前にperdona(すみません)といって道を開けてもらう。日本のように何も言わず肘で人を押して何も言わないなんていう失礼は見たことがない。
なんだか人対人で暮らしているという実感が湧く。


この2つを踏まえてバルセロナは居心地が良いと感じさせてくれて住みやすい。
人間が人間と暮らしているということを実感させてくれる。
道で転べば道ゆく人が大丈夫? と声をかけてくれたり、おばあちゃんの荷物を持つのを助けたり、子連れやお年寄り、不自由な方に席を譲るのは聞かれなくてもやるというごくごく当たり前なことで、日本での他人は他人みたいな、同じ人間なのになって思い、悲しくなるような場面に出会ったことはこの累計約2年のバルセロナでない。

ここにいると忘れてた「心」を取り戻せる気がする。

日本にはいいところもいっぱいある。
でも羽田空港に着いて電車やバスで自宅まで帰る時にすぐに感じる、あのなんとも言えない違和感は奇妙なところがあると毎回帰国の度に、いつから日本(特に忙しい都心部)はこうなってしまったんだろうと心が痛くなる。



1/5



出発まであと3日
今日は珍しく天気予報通り雨。

今日はゆうみとことえと、ことえの家で集まることになっていた。
朝、鯖を買いに市場へ行くとマテ貝を安く見つけたのでマテ貝も一緒に調達。
夜、ことえの家へ向かおうと思うとまた雨。
仕方ないので電車で行こうと家を出ると子供だらけ。
何事かと思ったら、今日はキリスト誕生を3人の王様がプレゼントを持って尋ねにくるという
Reyesの前日で、子供達は街を巡回するパレードに何が欲しいかお手紙を渡す日。
クリスマスにもプレゼントをもらって明日ももらえるらしい。
スペインに住む家族の親たちは大変だ。

さて、ことえの家ではすっかり話が盛り上がって気がついたら朝の4時だった。
歩いて家に帰ったはずだが全然覚えていない。





1/6



起きたら10:30
太陽が眩しい。
まだ5時間くらいしか寝ていないので体がだるい。
13時にまた寝て、起きたら16時だった。
あわあわ
熱いシャワーを浴びて外へ出た。
オランダ人の友達ルイサとワッツアップして、
お互いの今年というより人生で何をしたいか
どう過ごしたいか
という話をした。
彼女の家に着いた時愛犬ゼウスがズーーッと吠えていて
どうしたのかと思ってしばらく経ってから
抱っこしたら吠えなくなった。
どうやら抱っこしてほしかったみたいだ。
かわいい。


その夜
彼が、
「明日ちょっとポルトガル語の勉強するわ」
と言い始めた。
あたかも言語を1日勉強すれば習得できるみたいな発言で
笑ってしまった。


1/7



夜中から風がヒューヒューいっていて
全然よく眠れなかった昨夜。
午前中から部屋の掃除とパッキング。
ああ、もう明日出発か。

ナチャに渡すものがあって夕方散歩がてらナチャの家へ。
最近カナリア諸島に位置するラ・パルマへ行ってきたそうで
その際に撮った写真を見せてくれた。
どれも綺麗でいい写真だった。
私も明日から始まる旅でどんな画と出会えるのか楽しみだな。

いつ戻ってくるかわからない大好きなこのバルセロナを出発するのは
どこか少し寂しいけれど、初めての土地に行くのは4年ぶりでワクワクする!



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