えもーしょん 中学生篇 #29
暇な日
2010〜2013/カイト・中学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.04.30
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#29 「暇な日」
(2010〜2013/カイト・中学生)
青い空が、点々と広がり
夏休みも残りわずかになった
ある日。
「もう、ここまで来るとやる事がないね」
と、隣で寝転ぶさやちゃんが言った。
「空を見上げているだけって、本当にやる事ないね」
と、ボク。
「今、何時?」
と、さやちゃん。
「10:30」
と、ボク。
「え!? まだ起きてから2時間しか経ってない!」
「そうだね…」
「具なしラーメンまで、まだまだ時間があるね」
「まだ、まだ、まだ、まだ、あるね」
「数えてみる?」
「具なしラーメンまで?」
「うん」
「それは、辞めとく」
と、流石に断る。
「それにしても、今日雲が早いね」
と、さやちゃんが言った。
確かに
こっちはそうでもないのに
空はすごく、風が強いみたいで
雲が、物凄い速さで泳いでいる。
「あ! いい事思いついた!」
と、自損満々にさやちゃんが言った。
「なに?」
「太陽が出ている時は、名一杯息を吸って、隠れた時は吐くゲームしよう」
「いいよ」
と、やる事がないので
ボクらは、今日1番のビックイベント
具なしラーメンまでの時間をどうにか
埋めようとしていた。
「はい! いま!」
と、さやちゃんの掛け声と共に
目一杯息を吸い込む。
「ん! ん! ん!」
と、なかなか雲が隠れないせいで
息が吐けない…。
そんなボクを見て
笑いをこらえる、さやちゃん。
この人、意外とSだ…
と、そんなことを思うと
太陽が雲で隠れる。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ!」
と、息を吐くが
今度はなかなか
太陽が出てこない。
「ちょ、ちょ、ちょっと!」
と、隣で苦しそうに
さやちゃんが言った。
空を、見渡す。
そこには、永遠に雲が広がっていた。
「はい、やめます」
と、さやちゃん。
「はい、やめます」
と、ボク。
「無理だね、これ」
「うん、無理だね」
「今、何時?」
「11:00」
「はぁ…」
「もう、帰る?」
「一回、帰るか」
「あ! わかった!」
「具なしラーメンの具を買いに行こうよ!」
と、さやちゃんは
ついに、具なしラーメンの具を買いに行くと言い始めた。
「具なしラーメンの具買ったら具なしラーメンじゃないじゃん」
「今日は、特別。だって暇なんだもん」
「そうだね…」
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!