えもーしょん 高校生篇 #10
結局、人生波乗りだった。
2013〜2016/カイト・高校生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.01.17
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#10
「結局、人生波乗りだった」
(2013〜2016/カイト・高校生)
プォォォォォォォォォォォォン!!!
試合開始のホーンが
ボクには、確かに聞こえた。
恐らく、ボクだけだが
きっと、おじさんBにもCにも
ボクの眼圧から、伝わっているだろう。
いや、伝わっていて欲しい。
ホーンと同時におじさんA(以下A)が
少し、手前に位置をずらした。
すると、少し気になった様子のおじさんC(以下C)
Cが、1番沖で波待ち
そこから3m、手前にAが
その、2m手前にボクがスタンバイ
いい、緊張感だ。
遠すぎず、近すぎず
セットが見えれば、いつでも
隣に行ける距離感だ。
「わかっているじゃぁないか2人とも」と
少し、嬉しい気持ちになり
スイッチが入る。
気がつけば、時間は経過している。
なんと、10分もセットが来ないのであった。
残り時間も、10分
また、誰も乗っていない。
そこで、Aは一本でも
バックアップを乗っておこうと
インサイドへパドルする。
しかし、彼はわかっていない。
このヒート
ベスト1 ウェーブなのだ。
いくら、バックアップを用意したとて。だ。
まぁ、このまま
ボクとCが乗らなかった場合には
彼は、優勝。
だが
それでは、見ているギャラリーの人々は
面白くないだろう。
彼らは、きっと
ドラマチックな展開を望んでいるに違いない。
それなら、答えてあげるのが
プロだ。(プロではないが)
こうなると、Cとボクの我慢大会と言っても
過言ではない。
さて、彼をどうリタイアさせるか。
ボクは、焦るふりをして
ウロウロ、ウロウロと動き回る。
すると、彼も落ち着かない様子だ。
遂には、彼もウロウロし始めた、
引っかかったのだ。
こうなれば、後は
インサイドへ向かう素振りをしてすれば
ボクな勝ち。
案の定、彼はインサイドへ向かった。
ボクには、見えていた。
遥か先で、轟々と盛り上がる
1つのうねりを。
2人に、絶対的に追いつかれない
自分が出せる
最大限のパドルで
沖へ向かう。
この日、1番のセットを掴み
見事、ボクの優勝。
ふふふ。とAとCを横目に
波にのる、2人は疲れた様子で
はい、はい。
と目で訴えてきた。
ふふふ。
結局、大人になった今でも
海から陸生活になった今でも。
同じ、状況は突如として訪れる。
ついさっきまでのボクの地位や椅子が
目を離した隙、手を抜いた瞬間に
平然と、他人が座っているもんだ。
そんな時に、諦め
己を貫き、個人プレーで花咲かせるべきか
負けじと、同じ場所で
グーの音も出ないほど
コテンパンにするか
結局のところ
後者を選んでしまうのは
きっと、みんなも同じなのではないでしょうか。
そんなこと、わかっているし
そうすべきだと思うが
時として、体も心もその気にならない時がある
そんな時は、もう一度
初心に帰って、楽しかった記憶の中で
オナニーでもして
立ち上がって戦う方が
より気持ちがいい。
ボクはそう、思った。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!