SUPで遭難

えもーしょん 小学生篇 #39

SUPで遭難

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / jun.18.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#39
「SUPで遭難」
(2003〜2010/カイト・小学生)

小学6年生。

近所で、SUPが流行り出した。

まだ、流行ったばかりで

湘南は波もないし

今よりも、全然

それどころか、ほとんど

ローカルのルールなんてなかった。

もしかしたら、あったのかもしれない。

近所のおじちゃんが

SUPにどハマりして

ハワイへ行ったついでに

5、6本買って帰って来た。

波がない、湘南。

足のつく場所で、ぷかぷか浮かびながら

座ることなく、波待ちをしていると

「おっはぁ〜」

と、例のおじちゃんがやってきた。

「おはよう〜」

と、返すと

ん?!

今日は、少し様子が違う…。

腰に、小さな網籠のようなものを巻き付け

さらに、浦島太郎のように

釣竿まで刺さっている…!

「まさか、釣りに行くの!?」

「そう〜! 江ノ島の方までね!」

凄い、凄いぞ! おじちゃん!!!

江ノ島までは、自転車でも

40分はかかると言うのに!

SUPで行くなんて!!!

凄いぞ! おじちゃん!!!

ビバ! 青春! ではないか!

と、子供ながらに

応援し、どんどんと

小さくなって行くおじちゃんを

じーっと見つめていた。

台風の日、波待ちするほどのアウトだろうか。

そこそこ、遠くまで行ったおじちゃん。

「江ノ島までは、まだまだかなぁ」

少し、見守るのをやめ

腰〜腹程度の、ダンパーで遊んでいた。

しばらくすると、潮が引いてきて

サイズは、気持ち上がるが

さらに、ダンパーになってきた。

そろそろ、上がろうか、どうしようか

そんなことを考え

波待ちをしていると

おじちゃんの事を思い出した。

もう、あれから

45分以上は時間が経った。

今頃、江ノ島にいるに違いない

そう、思い江ノ島の方を見る。

うん、やはりおじゃんの姿は確認出来なかった

あぁ、今頃江ノ島のあの裏側で

楽しく釣りをしているんだろうなぁ。

そんなことよりも、このダンパーは

どうにか、ならんのか。

ふと、茅ヶ崎の方を見る

なんだか、向こうのほうが良さそうな気が…。

ん、?

それは、茅ヶ崎方面の沖合。

見たことのある、小太り中年男性の姿が

まさか…!?

じーっと、じーっと見つめる。

やはりそうだ、おじちゃんだ。

どうやら、流されてしまったみたいだ。

必死に、こちらに向かって

オールを漕いでいるが

まったく、戻ってこられる気配がない。

それどころか、どんどんと

沖の方へ、流されている。

しばらくして、漕ぐのをやめ

両手を目一杯使って

大きく、大きく、手を振っていた。

これは、SOSのサインだ。

茅ヶ崎方面の誰かが通報してくれたのだろう。

程なくして、海上保安官の小さなボートに

引っ張られ、おじちゃんは戻ってきた。

ヘトヘトになったおじちゃんは

さっきよりも、ずいぶん歳を取ったように見えた。


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