ビーチ

えもーしょん 大人篇 #56

ビーチ

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / sep.14.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#56
「ビーチ」
(2016~/カイト・大人)

心地良い波の音で目が覚めたら

寝ぼけてたっていい。

裸足のままでもいい。

ゆっくりでもいいから、二度寝はしないで

ベットから出て

波の音がする方へ向かった方がいい。

目の前のビーチには、結構人がいる。

決まって、ご高齢の方が多い。

朝が早いからかもしれない。

犬を連れて、走っていたり

歯磨きをしながら歩いていたり

夫婦で歩いていたり

波打ち際を誰かの足跡に沿って歩くと

昨日見たおじいさんが、向かいからやってきた。

彼は、挨拶代わりにほんの少し

にこりと笑った。

外国の挨拶に慣れていないボクは

とっさの紳士に驚き、固まってしまった。

不思議そうにボクを見つめる紳士は

そのままさっていった。

ホテルから、一つ先のポイントへ波を見にいく

綺麗なポイントに、2、3人しかいない

贅沢な波が誰も乗らないまま流れている。

急いでホテルに戻りボード抱え海へ走る。

汗が噴き出すまま

ゼーゼーハーハー

走っていると、大きな見覚えのある紳士の背中が

後ろから、汗だくの小僧が走ってくるのを見て

不思議な光景なのだろう。

よ! っと手を上げ

気を付けろよ~と言っている。

貸切の、ポイントで楽しんだ後は

少し遅めの朝ごはん

同じお店の同じものしか食べれないボクは

パイナップルと、ヨーグルト。

少し焦げたトーストを食べる。

カウンターで新聞を読みながらコーヒーを飲む紳士は

ボクに気がつき、こちらに歩いてくる。

「座ってもいいかい?」

低い声の彼

席につき、「JAPAN?」

そう言った。

「そうだよ」

と、答えると

「TOKYO」

と、それだけ。

「どこからきたの?」

「1ヶ月前にアメリカから」

「どうして、スリランカに?」

「友人が建てた建築物を見にな」

「どうだった?」

「よかった」

「君は? どうしてスリランカに」

「サーフィンだよ」

「若い頃はやったよ、カリフォルニアでね。ニューヨークでもサーフしたよ」

「寒いでしょう?」

「そうだったかな」

「このホテルが1番いい」

「先週、向かいのホテルに泊まったが若い子が多くてな」

「海の目の前だしね」

「そうだな」

「コーヒー飲むかい?」

コーヒーを片手に、なにもない時間が流れた。

仕事やイベントに追われ、時間に追われ

都会で忙しなく動き回ったボクには

不思議な時間だった。

何時間もくつろいだ。

夕方になるまで。

いま、何時だろう

時計を探すも、ホテルに時計はひとつもない。

あぁ、そういうことか

ボクは気がつき、彼を見る。

彼は、にこりと笑った。

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