THE GIRL EXPLORERS vol.01<br/>-Meg-<br>

THE GIRL EXPLORERS vol.01
-Meg-

Photograph : Satoru Nakano
Text : Aika Matsuzaki

People / 2018.11.27

「旅先で、あと1日あったら何をする?」


さまざまなスタイルで暮らす女のコたちの妄想DAY TRIPを紹介する
「THE GIRL EXPLORERS」。
記念すべき第1回目はオンラインショップ「Swell Vintage」オーナー、
Megさんの妄想TRIP!


name: Meg
occupation:Swell Vintage Owner&Buyer





「私、ハンターなので。ずっとひとつのところにはいられないし、新しいモノをどんどん見つけていきたい」
やさしいハスキーボイスでそう語る今回のエクスプローラーは、セレクトヴィンテージを扱うオンラインショップ「Swell Vintage」を営むMegさん。年に最低でも3回は古着の買い付けでアメリカ西海岸を訪れるという彼女。現地で夫と小学3年生の息子と合流し、そのまま家族旅行を楽しむ……というのが、最近の旅の定番スタイル。目下の旅の目的は、バイイングと、家族との寛ぎの時間だ。そんな彼女だからこそ過ごしたい「もう一日のDAY TRIP」とは?




—もし旅に出て急に一日余裕ができたら何をしたいですか?

やっぱり、古着屋に行くと思います。
買い付けではなく、自分が欲しいものをひたすら探しますね。

—お気に入りの古着屋に?

お気に入りのお店にももちろん行きたいんですけど、基本、私、ハンターなので(笑)。
新しい、誰も知らないところに、いち早く行きたい!みたいなのが、常にあって。
だから、行ったことがないお店に行く、いいチャンスですね。あとは、すごい田舎町のアンティークモールに行くかな。行くだけでも何時間もかかるし、とにかく広くって、見てまわるのに相当時間がかかる。いつも「時間が足りない……」と泣く泣く後にする、そんな場所。だから一日フリータイムがあったら「行ける!」って、即出向きますね。もちろん、仕事スイッチはOFFに。でも、それでもやっぱり、行きたい。もともと好きなんですよ、モノを探すのが(笑)。



—買い付けの際はお店に並べるものと自分の欲しいもの、分けている?

やっぱり気持ちが“買い付けモード”になっているので、あまり自分の欲は出ないんですよね、不思議と。ただ、「自分が好き!」と思えるものだけを買い付けることにしているのがマイルール。だから、「これいい、これいい……」ってどんどんカゴに入れて行くと、2回に1回くらいの割合で「これはゴメンナサイ……自分が着たい商品にしたくない!」と思えるモノとの出会いがあるんです。どうしても手放したくないモノと出会ったら、潔く「これは別で」と自分用にします(笑)そのセンサーが働くモノ以外は、自分で着たいと思うものでも店頭に並べます。そうすると、絶対に素敵な方が、買ってくださるんです。



—ずっと、古着が好きですか?
私の若い頃は、渋カジ全盛期。「ラルフローレン」が大流行していて、トラッドベースのアメカジファッションが主流。今でいう、リーバイスのジーパンやチャンピオンのスウェットのヴィンテージを、リアルタイムで着ていた時代。だから、古着には抵抗がないですね。ただ、昔からすごい古着好きだった?というと、意外とそこまでこだわりはなくて。オンラインショップも、始めはバッグだけでした。そのうち洋服も、と海外で買い付けをするようになって、モノや人との出会いがあって……。

—好きなことに向き合っていたら、気がついたら今の場所??

本当、そうです。自分では意図してないけれど、結局「好き」でここまで繋がってきています。ショップを初めて6年ほど。仕事にしてみて、もっと古着の魅力に気づいた。だからこそ、完全にOFFな日がぽっかりできたとしても、やっぱり古着を探しにいっちゃいます。

—古着の魅力は?

私、タグとかボタンとか、パーツフェチなんです。例えばタグに名前とか書いてあると「きゅん❤」となる。「わー!大事にしてたんだぁ」って。ボタンが一個だけ違うものは「付け替えてもらったのね!」と想像を膨らませたり。そういうのがあるから、一つひとつの古着にトキメキを覚えますね。古着は、素材とか染料の入り方とかがいまの洋服とは全然違って、そのもの自体の魅力がすごい。そんなところも、好きです。いまでこそセレクトヴィンテージを扱うオンラインショップが増えてきましたが、私は流行りで一過性のもので終わるのは嫌。だからブレないで、自分が「イイ」と思うものをずっと置いていこう、と決めています。




自分のいつもの旅のスタイル



—買い付けの旅は、いつもどんな感じですか?

昔は仕事と家族旅行を一緒くたにしていましたが、買い付けには、やっぱりとことん集中したい。家族旅行の合間に買い付けをするとつい仕事スイッチが入ってしまい、息子もそれを察知するんです。だから、買い付けのために私一人だけで、1週間早く発ちます。そこで買い付けをある程度済ませ、後から主人&息子と合流。





そこからは、例えばサンディエゴを拠点にしてディズニーランド、ユニバーサルスタジオ、レゴランド……に行ったりと、完全に小3の息子中心のプランにチェンジ。それが最近の定番ですね。家族が揃ったら仕事モードをOFFにしますが、やっぱりまだ余韻が残っていることももちろんあります。道中によさそうな古着屋やスリフトショップを発見してセンサーが働くと「ちょっと寄っていい?」ってなったり(笑)でも、旅の後半は家族との時間が最優先。だから、極力我慢します。





—どのあたりに行くことが多い?

私と主人がアメリカのカルチャーが好きで。主人がサーフィンをすることもあり、最近では西海岸ばかりです。こぢんまりとオンラインショップだけをしていた時代はハワイで買い付けをしていたのですが、イベントやポップアップショップなど幅を広げるにつれ「島じゃ足りない」と、大陸に渡っていったというワケです(笑)。いつも拠点にするのは、ロス。違う場所も気にはなるのですが、フリーマーケットで出会った現地のディーラーさん、ほんとにみんないい人で。やっぱり、会いに行きたくなっちゃうんですよね。

—お子様が小さな頃から買い付けに行っている?

8ヶ月くらいの赤ちゃんの頃から、連れていっています。息子のパスポートはビサのスタンプだらけで、全然子供っぽくないの(笑)

—小さなお子様との旅は大変なことも多い?

はい。いまになってようやく、旅の流れがスムーズにできてきましたね。息子が小さいときは行きたいところの10のうち、2しかいけないことも。ただ、そういうときも、不思議と「満足だ」と思える量を買い付けできていた。「今回買えなかった、どうしよう」というときは、なぜだか1回もなくて。主人に「息子を見てるから、あの店行ってみれば?」と言われて行ったら、お宝があったり。「ほらあったでしょう」と(笑)なんとなく、家族のセンサーで、旅がいい方向にまわってるんですよね、いつも。息子が大きくなった今では、家族みんなで古着屋に行くこともあります。主人も古着が好き。息子はというと、大抵店内にいい感じのマイソファを見つけて、寛ぎつつゲーム(笑)。フリーマーケットで素敵なおもちゃを見つけたよ!と喜ぶことも。そうやって、家族みんなが満足して、いつも旅からは帰ります。



—息子さんは、ママの仕事をどう思っていますか?

今は子育てが優先。だから、ショップを持たないスタイルだし、普段はすっぴんにジャージ。仕事で外に出る日に化粧をしておしゃれをすると、子どもながらに“お母さん、なんか、カッコイイ”と感じるみたいです。ポップアップなどのイベントの日は、積極的に手伝いに来てくれます。「きょう、ママのお店をてつだいました。お客さんがいっぱいきて楽しそうで、ぼくはうれしかったです」って、絵日記を描いてくれたこともあって。うれしかったですね。



—旅で大切にしていることはどんなことですか?

気分!私は、ノープラン。その脇で、主人がすごい計画的にプランを立ててくれます(笑)
パンフレットみたいなしおりに、帰りの飛行機の時間まで書いてあって、閉じて……ハイ!って。グーグルマップには、行きたい場所に全部ピンがうってあって。古着屋、スリフト、アンティークモーク、全部色別に。でも……、私、基本的に見ないんですよ。ゴメンナサイ……(笑)申し訳ないと思いつつ、私は本当に、気分で動きたいので。飛行機を降りて空港に着いたときの気分で、動きたい。肌に感じる雰囲気や気分、なんとなくの空気感で「あ、なんか今日山っぽいな」と思ったら、山のほうに行ったりとか。もう、直感です。それが一番大事!



—西海岸に行くと、必ず訪れる場所はありますか?

あります。お気に入りのお店!ちょっと辺鄙な場所にある、少し怪しい古着屋さん。店内は古着がてんこもり。お店に入ると、ざくざく切ったジーンズに、ほぼ裸なんじゃないかってぐらいのテロンとしたタンクトップを着た、そばかすとメガネ、おだんごがトレードマークの白人のおばあちゃんが出迎えてくれる……。そんな、一見怪しいお店なのですが(笑)、よくよく見るとお宝だらけ! よいしょ、よいしょって古着の山をかき分けると、ものすごく素敵なヴィンテージが、ざくざくと出てくる。そこには、必ず行きます。

—旅に必ず持っていくものはありますか?

かさばる服はあまり持っていけないので、ジュエリーとハットを数種類は必ず持っていきます。特にハットは、買い付けのときにかぶって存在を印象付けるツール。「ハットの子だね!」って。

シルバーもちゃんとつけるし、足袋ブーツも履く。そして、ハットはマストです。長時間の移動もあるから、動きづらいし、キツイですけどね。ある程度自分を主張しないと、覚えてもらえないし、繋がっていかない。印象的な格好だと現地では、褒められることが多くて。「そのジュエリー素敵ね」とか、「足袋のブーツって履きやすいの?」とか。違うフリーマーケットで同じ人と再会することも多く、「こないだの子でしょ!」と話が広がることも。

本来買付って他のバイヤーさんにバレないようにこっそり地味に動くのが鉄則なのですが 、スリフトショップはともかくフリーマーケットなどコミュニケーションが必要となる場では、覚えてもらって現地の方々と繋がっていきたいというのと、いつもの私のままで行きたいなという思いもあってこのスタイルになりました。古着ブームな今って買い付けの仕方も以前とは変わってきているような気もします。





—最近心に残っている旅の出来事は?

前回の旅で、出会って2回目のディーラーさんと家族ぐるみでキャンプに行ったこと。
「メグミが来るから、パーティしよう!」と言ってもてなしてくれたのですが、旅の疲れも出てしまったのか食あたりになってしまい......。おいしくて楽しくて最高なパーティだっただけに自分のヤワさにが情けなくなりましたが、それも含めていい思い出です。
場所は、アメリカ西海岸山岳部のBig Surというエリア。iPhoneも通じないし、Wi-fiも使えない。でも、夜天を仰ぐと、天然のプラネタリウム! 息子はゲームっ子なのですが、着いたとたんに、めっちゃ自然を満喫してました(笑)。寒くてスリフトでダウン買ったり……なんていう予想外の展開も楽しくて、旅感が濃かったですね。




滞在を一日延ばして「どんな好きなことをしてもいいよ!」と言われても、結局は毎回の旅でしている“古着探し”がしたい、というMegさん。その答えが出てくるのは、普段から自分の「好き」や「大切」に忠実に、自分らしく人生を生きているからこそ。それに気づいたから、あしたから、また頑張れる。「私も、この質問についてあらためて考えてみたことで、やっぱりそうなんだ、ってしっくりきてます。家族がいて、モノを探して……。それが私の一番の旅のスタイルなんだ、って」



Meg /2011年にヴィンテージセレクトのオンラインショップ「Swell Vintage」をスタート。自らがバイヤーとして年に3回以上、アメリカ西海岸に買い付けに行っている。洗練されたヴィンテージのほかに、オリジナルデザインのシルバージュエリーやブランドとのコラボ商品も登場。最近では「Johnbull Private labo」とコラボしたオーバーオールが、感度の高いファッショニスタから好評。ポップアップショップなども定期的に行っている。

■ 次回出店 Laforet Market vol.6 12/15,12/16 出店予定。
■ インスタグラムアカウント@meg_swellvtg

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