帰り道

Emotion 第37話

帰り道

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.09.11

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第37話

夕方までサーフィンをして、ホテルに戻りひと休みする。普段なら、この時間にお腹が空いて何か食べたくなるけれど疲れて何も食べる気にはならない。ラウンジでコーヒーを飲んで息を吐くと柔らかいソファに埋もれるようにゆっくり目を閉じた。

ふっ。と目を開け周りの人の気配があまり少なくなっていない事を感じて少し安心した。最後のコーヒーを注ぎに起き上がり、コーヒーメーカーの前でボーッとしているとやっとカイトがやって来た。

彼は仕事を辞めて旅に出てからというものの、どこか仙人の元で修行をしたのではないか。と思うほど以前とは比べ物にならない底なしの体力を身につけたようだ。

よっ! と軽く手を上げこちらにやって来る。

カイト「休めた?」

僕「気がついたら寝てたよ」

カイト「だよね、何回か見に来たけど寝てたから散歩してたよ」

僕「帰り、大丈夫?もう一泊して明日の朝出ても大丈夫だけど」

カイト「全然、大丈夫」

そう言って、ホテルを後にし彼のバイクに再び乗る。ゆっくり帰ろう、眠くなったら休もう。と僕達は約束をして出発した。

夜の風が頭を冷やしてとても気持ちが良い。街灯が線に伸びているように見えて、今回の旅行はどうだったのだろうかと考えた。あまり良くない記憶の場所に行こう。と考えることは選択肢としてないけれど、今回はとても良いきっかけになったと感じた。道中は忘れていた細かな記憶が蘇り少し寂しくも苦しくもなるが、そこで見た綺麗な景色や綺麗だと感じた事は変わらないし昔の気持ちに触れる事が出来ることは貴重な体験だと思う。

またここに来たいか。と聞かれると、この楽しいままで心に収めておきたい。たまたま前の道を通り過ぎても立ち寄る事は出来ないくらいがちょうど良いかもしれない。


続く



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