ありがとうの初デート。

えもーしょん 中学生篇 #25

ありがとうの初デート。

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / apr.03.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#25 「ありがとうの初デート」
(2010〜2013/カイト・中学生)

本編が始まる前の

宣伝が終わり、館内の照明が落とされた時

彼女からの

突然のキス! にボクは

固まっていた。

固まっていたのは

びっくりしたから、ではない。

「キス! しろ」

と、言う自分と

「格好つけて、にこりと笑い、映画を見ろ!」

と、言う自分が

戦い始め

固まっていた。

ボクは、そおぅと

前を見て、映画を見始めた。

彼女は、さらに

肘掛を跨いで

ボクの手を握り

肩に寄り添ってきた。

ボクは、また固まった。

「そのまま、寄り添え!」

と、言う自分と

「そのままなにもせず格好つけろ!」

と、言う自分の2人が

戦っているからだ。

ボクは、なにもせず

そぅおっと、もう片手を

彼女の手に添えた。

彼女は、寄り添ったまま

上目遣いをしてきた。

「ん? これってキス!?」

かと、思いきや

ただ、見てきただけだった。

それからのことは、

1度、トイレに行った事しか覚えていない。

映画館を出て

「やっぱ、コナン君ワンパターンだねぇ」

と、彼女。

「そうだね〜。未解決事件起きないね〜」

と、ボク

「ワンパターンってわかっているのに毎回見ちゃうよね〜」

「そうだね〜」

「ドーナツ食べる?」

「食べる〜」

と、映画館に隣接している

ショッピングモールの、ドーナツ屋さんに入った

ボクは

オールドファッションと

黄色い粒が乗ったやつ。

それにメロンソーダ。

彼女は

中にクリームが入ったやつ。

カスタードクリームが入ったやつ。

ルイボスティー。

「炭酸なしで、ドーナツ食べれるの!?」

と、少ししてボクは言った

「え、全然違う大丈夫」

と、彼女は言った。

席に座り

ボクは、最初のキスは

なんのキスなのか

聞きたくて、聞きたくて

しょうがない。

「あのさ、さっきのキスさ」

と、ボク

「うん?」

と、それがなに? と言わんばかりの彼女

「あれ、なにキス?」

「え、なにキス!?」

「普通キス?」

「え、普通キスなの!?」

「え、違うの?」

と、あれは普通キスだったらしい。

普通キスかぁ…。

と、なにがなんだかよくわからないまま

ただ、ドーナツを食べた。

ファーストキスはドーナツの味だ。

ボクは、その時

後悔した。

それは、ファーストキスの味が

塩味が、キャラメル味が

どっちか、忘れてしまったからだ。

彼女は、

塩、キャラメル、塩、キャラメル

順に食べていた。

その、塩。のタイミングか

キャラメル。のタイミングか

もしくは、塩、キャラメル。が

2つのタイミングか

忘れてしまった。

だから、これから

誰かにファーストキスの味を尋ねられても

オールドファッションの味

しか、答えられない。

なんてこった。

ボクは、急いで

彼女に、キスをした。

彼女は、少しびっくりしていた。

彼女は、言った。

「オールドファッション」

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