「バンクシーを盗んだ男」を語る男と女

TYPE OF MOVIE-映画を観る男と女 #5

「バンクシーを盗んだ男」を語る男と女

Illustration : TOMIMURACOTA

People / 2018.10.23

同じ映画を観ているのに、男と女で感想が全く違うことがある。印象に残っているシーンも、劇中の曲に対する評価も違う。「TYPE OF MOVIE」では、そんな男と女の感性の違いにフォーカスを当てながら、今注目の映画をご紹介! 第5回目は「バンクシーを盗んだ男」です。

「バンクシーを盗んだ男」をグラフィティ好きな男と女が鑑賞。



「バンクシーを盗んだ男」について


2007年、正体不明のグラフィティアーティスト・バンクシーが、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区にあるベツレヘムの巨大な分離壁に描いた「ロバと兵士」が地元住民の怒りを買う。彼らはウォータージェットカッターで壁画を切りだし、オークションサイト「eBay」に出品。巨大なコンクリートの壁画はパレスチナから海を渡り、美術収集家たちが待つ高級オークションハウスへと送られることになった。ストリートアートのあるべき姿、芸術と価値、芸術と著作問題、そしてバンクシーがもたらす光と闇について描いたドキュメンタリー作品。

男と女のプロフィール


男/普段映画はあまり見ない。けど、グラフィティへの関心が強い男。「Barry McGee a.k.a. Twist、タギングがかっこいいのとキャラが個性的で好きで、2004~5年の頃の作風が好き」という。また彼曰く、「O'Clock、動画の勢いが凄い」らしい。→https://www.youtube.com/watch?v=AH4VgBf4Xa0

女/「ヒューマンドラマ、SF、ドキュメンタリーなど興味のあるものはなんでも観る。好きな監督はジム・ジャームッシュ、マイクミルズなど」という女。グラフィティアーティストについては「知識が浅いのですが、ストリートアート全般興味あります。大元を辿ればポップアートがもともと好きというのもあり、ジャン・ミッシェル・バスキアなどは好きです。バンクシーももちろん好き。彼の多大なる影響力と社会が反応する様は見ていて興味深いから」とのこと。

男と女の映画レビュー


Q1.「バンクシーを盗んだ男」はバンクシーがもたらす”光”と”闇”がテーマだそうです。光の部分と闇の部分、それぞれどこだと感じましたか?


男/光=アート業界への貢献。闇=有名で作品に高値が付いているが故の利権関係。

女/バンクシーの絵は一見、世の人々を代弁しているかのように希望をもたらすが、結局はそれが商業的な産物としてポスターになったり、オークションで売られたりしてお金が絡むトラブルへと見舞われるところ。価値そのものが何の意味も持たなくなっているように感じた。

Q2. バンクシーはグラフィティを通じて、何を伝えようとしていると思いますか?


男/当たり前になっていることへの問題定義。

女/伝えるというより、人々とコミュニケーションを図るために創作しているように思う。

Q3. 今作を観て、感じたこと、気になったところなど、振り返ってみて印象に残っているところを教えてください。


男/タクシー運転手のボディビル。

女/グラフィティという文化がもたらす社会の反応が、結果残念な方向へと流れていく様子を痛烈に感じる内容だと思う。見ていて悲しくなった。

Q4. 「バンクシーを盗んだ男」にあなたなりのキャッチコピーをつけてください。


男/利権。思惑。ボディビル。
ドキュメンタリー映画なので内容がわかるようなキャッチコピーにしてみました。女/金欲と筋肉
人間の欲は尽きないなと思いました。

そして、3人目(男)のレビュー


ストリートアートの光と闇、そして表と裏。


バンクシーがパレスチナのベツヘレムに描いた1つの壁画「ロバと兵士」にフォーカスを当てた今作。1つの作品にとりまく“光”と“闇”を見つめた「バンクシーを盗んだ男」は、私たちにいくつかの問いを投げかけてくる。“アートの価値”とは一体なんなのか? ストリートアートの権利は誰のものなのか? メッセージ性のつよいストリートアート(バンクシーの表現)は善か悪か?など……。今作の見どころは、ディーラー、現地(ベツヘレム)の人々、キュレーターなど、「ロバと兵士」に関わってくる人たちの言葉を拾いながら、これらの問題と正面から向き合っているところだ。今回、「バンクシーを盗んだ男」を鑑賞した男と女も言っているように、お金に関わる利権問題や私利私欲など、あまり見ていて気持ちよくないところまで掘り下げているところがおもしろい。今作は、ストリートアートが好きでそのリアルな裏側(社会問題)まで覗いてみたいという男女におすすめ。“光”と“闇”、この両面から見つめることで、また違った視点でアート作品を見つめ直すことができるはずだ。また、イギー・ポップのナレーションにも要注目だ。




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