海と街と誰かと、オワリのこと。#34
誰にも言えない、生活と性格
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.03.06
東京での1人暮らしは、よく晴れた気持ちの良い日ほど孤独を感じていた。こんなに天気が良いからどこかへ出掛けようと思っても外を歩けばカップルばかり目に入ったからだ。彼女が欲しいという気持ちより、誰かとお互い一対一で時間を共有したかった。
昨日、東京タワーでモデルのさきと付き合うことになった。彼女は同い年なのに人生8回目を過ごしているかのように落ち着いている。たまに、何かに絶望したように僕に気をつけて。と心配してくれるけれどそれが何なのかはわからない。人間関係の話なのだろうけど。彼女の家の彼女のベットで目が覚め、大きな窓から東京の夜明けを眺め考えている。ゆっくりと空が明るくなって、街は起きはじめる。隣からはシャンプーのいい匂いがする。
さきの寝顔を見ながらふと、僕たちはそんなに長続きしないだろうな。と思った。それはこの関係が真剣なものかどうかではなくて、単に僕が何も望んでいないからだと思う。東京での生活で何か目標があるかと聞かれたら、何も答えることは出来ない。何かやりたいことはあるかと聞かれても同じ。何かをしたいわけでもなく、やりたいことがなくて悩んでいるわけでもない。ただ、何となく今この瞬間が幸せ。と感じて日々生きている。それ自体に満足しているから、やりたい事はないけれど僕は幸せ。だけど、この考えはジンやさきには言えない。なぜなら2人は大きな夢と沢山の目標を持って毎日進んでいるから。
彼女達にとって、この考えを持つ僕はあまりいい人間に見えないだろう。それは幼少期からアスリートだったからよくわかる。高い目標に向かって突き進みたいときにマイペースな人が側にいると目障りに感じる経験があったから。それは自分のペースが崩れることへの恐れだったということは、今理解した。
さきのことは凄く好きだ、可愛いし優しいし話をしていてとても楽しい。だから多分、振られるまで隣で楽しく過ごせると思う。こうやって初日に終わりの事を考えるのは振られた時になるべくショックを受けないよう心の準備をしている気がする。結局、僕はかなり自分勝手な性格なんだ。
さき「おはよう」
何度も僕がベットでゴロゴロと動いたからさきがアラームよりも先に起きた
僕「おはよう、起こしてごめんね」
さき「ううん、大丈夫よ」
さき「ご飯作るね」
僕「手伝うよ」
さき「ありがとう」
続く
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