スウィートな夜に、藁人形を

えもーしょん 大人篇 #26

スウィートな夜に、藁人形を

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / may.11.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#26
「スウィートな夜に、藁人形を」
(2016~/カイト・大人)

真夏の、原宿。

熱風のビル風。

制汗剤の匂いに、日焼け止めの匂い。

キャピキャピの女子高生に

戸惑うボク。

早く、抜けたい。

ムンムン、ムラムラ。

暑苦しい、竹下通りを抜ければ

もうすぐ、原宿のオアシス

代々木公園が。

夕暮れ、今日も体育館へと

太陽が沈んでいく。

公園から、帰る親子。

小さな三輪車を片手に

娘と手を繋ぎ歩くパパ。

夕日に伸びる2人の影を

鬼の形相をした、1人の女の子が

踏んだ。

片手には、ハンマー。

片手には、藁人形。

「これは…」

夏になると、暑さに負け

脳みそが、とろけだす人がちらほら。

彼女もきっと、その1人だろう。

ボサボサの髪が

夕日と、涼しい風に揺られているが

恐らく、彼女には逆風に感じるだろう。

少し、近づくのは危険そうだ。

そう思い

近くの、売店でおでんとポカリを買い

ベンチで食べることに。

太陽は沈み、きっと彼女コングがなる時間。

人気のない、代々木八幡側の

雑木林。

ガンガン! ガンガン! ガ、ガ、ガガンガン!

と、リズムよく

軽快な、ステップとともに

釘打つ彼女。

「〜ため息ばかり〜♪」

と、なにやら歌を歌いながら

釘打つ彼女。

「〜夏はめ〜ぐ〜る〜♪」

まさか!

と、次の瞬間

「四六時中も、好きと言って〜!」

「夢の中へ連れて行って〜♪ ぅ、ぅ、ぅぅぅぅぅぅぅぅ」

泣きじゃくりながら

真夏の果実を熱唱する彼女。

ボクの体もつい、横に揺れ

「忘れられないHeart&Soul」

と、言ってしまった。

は!!!

びっくり、ボクの存在に気づく彼女。

声にならない。

「砂に書いた、名前消して〜♪」

と、ボクに向かい歌う

「波はどこへ帰るのか〜」

と、これ以上は

危ない。

「はぁぁぁぁぁぁん、ずっと一緒って言ったのは、あなたじゃないのよぉぉぉぉぉ!」

あぁ、やばい。

「こんな、夜は涙見せずに」

「こんな、夜は涙見せずに」

と、ボクの

「また、逢えると言って欲しい」

を待っているようだ。

よく見ると、周りの木々には

ずらりと、藁人形が。

文字通り、みんなの釘付けにっ❣️

今夜も、彼女には冷たい雨が降りそうだ。


アーカイブはこちら。
小学生篇
中学生篇
高校生篇
大人篇

Tag

Writer