初めての滞納

えもーしょん 大人篇 #61

初めての滞納

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.10.12

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#61
「初めての滞納」
(2016~/カイト・大人)

ハァーン! もうイヤーん!

オカマのような声で叫んだある日。

遂に、我が四畳の家の家賃を滞納することになった。

腰の位置がベッコリと凹んだベットを出て

トイレへと向かった。

初めての家賃滞納に心底怯えているボクは

もちろん、便秘。

出来ることなら、お尻からお金が出てきて欲しいと願い

踏ん張ってみるも、なにも出てこない現実に

焦りと、不安、そして恐怖が襲う。

四畳の小さなアパートの家賃は3万円。

仕方なく、持っているスニーカーを売りに行ったが

1万円にしかならなかった。

しかも、帰り道に美味しそうなラーメン屋さんを見つけてしまい

「1万円もあるから、なんでも食べれんじゃん!」

と、滞納のことなんか忘れて入店。

スープまで飲み干し、お会計の際にポケットにある

1枚のお札を見て我に返る。

お腹いっぱいに入り、やがてはトイレに流すであろうものに

千円も使ってしまったのか…と
約30分前の自分を殴り殺したい気持ちを抑え

泣く泣く、1万円を渡す



お釣りで9千円帰ってくると、なんだかお金があるように思え

最寄のスーパーでお惣菜まで買ってしまった。

家に着く頃には、なんと8千円になっていたのだ。

「どうしよう…」

この時、ボクには最悪な答えしか出てこなかった。

それは、おばあちゃんに毎月お金払うから!

と、約束して買ってもらったMAC BOOKを売ること。

これを売れば、間違いなく3万円は手に入るが…。

毎月、お金払うから! と言って

1円も払ってないのにもかかわらず、売ったなんて聞いたおばあちゃんは

もしかしたら、怒りに震え死んでしまうかもしれない…。

が、そんなことを考えている暇はない。

ここは、ダメ男をまっとうすべきである。

「ボクは、ダメ男!!!」

「ビバ! ダメ男!」と心の中で何度も唱え

罪悪感を紛らせ、パソコンを売った。

なんと、最新の上ほぼ使っていなかったから

買取価格は、5万円。

さらに、クーポンを使って結果5万8000円という

この上ない、ラッキーに恵まれた。

「タダで8千円もらえるの!?」と思わず叫んでしまうほどだ

無事、夢見るニートは大金を手にし

帰り道に、不動産屋さんに寄って家賃を支払い

ベッドでアニメを見るのであった。

来月の家賃が迫っていることに気づかずに…。


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