小さな、幸せ集。

えもーしょん 大人篇 #20

小さな、幸せ集。

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.03.21

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#20
「小さな、幸せ集」
(2016~/カイト・大人)

朝起きると、つけっぱなしの

テレビで、好きなバンドマンが

歌っている。

真昼の坂道を自転車で降って行くそうだ。

なんとも、いい情景が浮かぶ。

大きな坂道を自転車で降る時は

立ち漕ぎの姿勢のまま、ノーブレーキで

降ると、いつもの景色よりも

目線が高く、最高に気持ちがいい。

そして、信号が青だったら

幸せだ。

1、奇跡的に締め切りよりも2日早く

原稿が書き終わり、優越感に浸っていた。

まい泉の、散歩に外へ出ると

とってもいい天気。

公園へ、歩いて行く途中

黒いコンクリートの上に、金色の

コインが落ちているのに気がついた。

近づいてみると、500円玉だった。

けれど、ボクは拾わなかった。

持ち主に、見つかりますように。

そう、思って歩くと

まい泉がこっちを見て笑った。

2、好きな女の子と

ディナーを食べに予約していた

お店に行った。

そこは、この日のために

3回も下見に来ていた。

あらかじめ、好きな食べ物を

聞いていたボクは

もちろん、下見の際に制覇していた。

彼女へのお勧めは

ゴルゴンゾーラのニョッキ。

自信満々で注文し

食べてもらった。

「美味しい〜!」と笑う顔がかわいい。

帰り際、告白をして振られたけれど

美味しい顔を見れたから、幸せ。

3、静岡で、一目惚れして

新幹線に乗せて持って帰って来た

「ウンベラータ」

暖かい、部屋に

入れないといけない事を知らず

バルコニーで、光合成させてあげようと

思い、ずっと置いていたら

みるみる、葉っぱが落ちて行き

最後の1枚に。

それからというもの、ウンベラータの為に

常に、暖房ON!

そして、お水を少しこまめにあげて

あとは、「頑張れーーー!!!」

と、応援していた。

3ヶ月ほど、経った日

小さく、ニョキニョキっと

新芽が出てきた。

今日も、天気がいい。

毎日を幸せだけで暮らすことは

難しい。

けれど、小さな幸せを見つけて

暮らすことはとっても簡単で

一番心を綺麗に保っていられる。

嫌いな、あの人に何か言われたって

こっちの空は常に晴れている。

忙しくて、我を失ったって

肉まんを食べて元気になれる。

そんな、人間でありたい。


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