11:00の商店街

えもーしょん 小学生篇 #29

11:00の商店街

(2003〜2010/カイト・小学生)

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.24

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!

#29 「11:00の商店街」
(2003〜2010/カイト・小学生)

2時間目の授業は算数。

「先生ー! お腹痛いでーす」

と、保健室へ行き

ママへ電話。

職員室へ行き、早退の紙を出し

脱出成功。

分数の割り算の授業から

学校がきらいになった。

わけわからん。

この後は、方程式とやらが

あるらしい。

映画の話だけでいい。

堂々と、正門を通り

商店街へ向かう。

道が凸凹で、普段スケボーで通ると

イライラするこの道も

今日は、輝いて見える。

11:00

太陽が、ジリジリし始めるこの時間。

静かに暖かい風が、商店街を抜ける。

早退した日の商店街は平和そのもの。

お米屋さんのいい匂いに

お豆腐屋さんの、いい匂い。

八百屋さんは、今日も暇そうで

魚屋さんのおじさんが

せかせか、準備をしている。

ボクは、歩く

静かな街には、ゆっくりと時間が流れる。

「なんか、いいなぁ」

「早退したからかなぁ」

と、ぶつぶつ独り言を呟きながら

石を蹴る。

いつもなら、おばちゃんに怒られるけど

この時間はいないようだ。

山崎ショップのおばちゃんが

「かいくん、もう終わったの?」

と、話しかけてくれた。

「早退したの」

と、ボク。

「あら、具合悪いの?」

「大丈夫ー」

「そう、たまにはそんな時もあるわよね」

「また、チョコチップメロンパン買いに来てね」

「うん、またね」

11:00の商店街は

やっぱり、なんだかいい。

白線の上を、ゆっくり歩いて家に帰る。

バローズが

「お!今日は帰りが早いね」

と、さっきまで寝ていたのか

少し寝ぼけた顔で、やってくる。

「お散歩行く?」

そう言うと

「あ、大丈夫でーす」と

いつもの定位置に戻って、倒れ込んだ。

たまには、ボクも

なにもない日を過ごそう。

せっかく、早退したんだから。


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