春と夏の間、春と梅雨の真ん中で

えもーしょん 中学生篇 #31

春と夏の間、春と梅雨の真ん中で

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.05.25

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#31 「春と夏の間、春と梅雨の真ん中で」
(2010〜2013/カイト・中学生)

1週間、晴れ間が続いている。

ここまで、晴れ続けていると

ボクの心も、不思議と

晴れているようにも感じる。

気分が良くなって

なにも、やる気になれない。

この季節は

なんと、呼ぶのだろうか。

家の前の、中学校のチャイムが

鳴っている。

今日も、ボクは

部屋の窓から、自分のいない

教室を眺めている。

中学3年生にもなると

学校へ行かない事への

罪悪感なんて存在しない。

いつからだろうか

思えば、夏休みを越えるたびに

ボクの学校への関心と

考え方が変わっていったのかもしれない。

中学校1年生の、春と夏の間の話。

入学式を終え

50m程しかない

通学路をゆっくり歩いていた。

隣には、制服姿が

なんとも、似合わないさやちゃん。

6年間、デニム姿しか見ていなかったせいか

妙に、不自然だ。

50mに詰め込む会話は

無駄がない。

要点のみを2人で話し合うのだ。

「学校ってなんで行かなきゃ行けないんだろうね」

と、さやちゃんが言った。

「先生の話を聞くためだよ」

と、ボク。

「え、じゃあさ。さっきの校長先生のスピーチ覚えてる?」

「んーーー。覚えてない…」

「でしょう??? 覚えないのに聞きに行かなきゃ行けないのってなんか不思議」

「そうだね…」

「みんな、そう思ってるのにどうして行くんだろう」

「行かないと、怒られるから…」

「無駄な時間を減らしているのに?」

「そうだよ。みんなそうやって大人になるんだよ」

「誰かが、決めた時間を守れないと怒られるの?」

「そうだよ」

「不思議な世界ね」

「不思議だよね」

「かいとは明日、学校行く?」

「ボクは、しばらく行かないよ」

「どうして?」

「ボクは自由だから」

「怒られないの?」

「誰に?」

「パパとかママとか…」

「怒られないよ。だって無駄な時間だもん」

「先生には、怒られるの?」

「たまにね、でもその後パパに怒られてるよ先生達」

「そ、そうね…」

「また、後でね!」

さやちゃんは、そう言って

家に帰る

ボクは、ボーッと

教室を眺めている。

「まったく、不思議な世界だ」

学校へ行かないボクはいつも

悪者だった。

行くことが、正しいこと。

そう、言ったやつ出てこい。

夏休みを過ごすたびに

自分の中で疑問が生まれて

自分の中の正解と答えが見つかるから

夏休みを越えるたび

学校への罪悪感がなくなるのかもしれない。

よく、考えてみると

不思議だ。

将来の夢が、学校の先生なら

毎日行くべきだ。

将来の夢は、サッカー選手。

そう言って、教室の壁に

貼っているのに

机に座って、算数を勉強している。

サッカー選手になりたいなら

サッカーすればいいのに。

反抗期のボクは

どこまでもひねくれていた。

春と夏の間、人間のホルモンバランスが

少し、狂うらしい。

春と夏の間の、春と梅雨の真ん中。

これが、どうも1年の中で

もっとも、悶々とする季節だ。

道に、アジサイが咲いている。

ちっとも、綺麗と思えない。

風に揺れるヤシの木がムカつく。

切り倒してやりたい。

ゴミ収集車の

「左へ曲がります、ご注意ください」

勝手に曲がれよ。

と、ムカつく。

春と梅雨の真ん中で、ボクは1人

悶々と戦っていた。


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