タイムリミット

海と街と誰かと、オワリのこと。

タイムリミット

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.01.17

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


ゆきが1人暮らしを始める代官山周辺でなんとなく物件を調べたら、とんでもなく家賃が高かった。ソファの上でブランケットにくるまり、ぬくぬくだらだら過ごそうとしていた僕の卒業までの週数週間がタイムリミットに変わった。一旦冷静になって、まずは起き上がる。ソファに座って深呼吸。。。。

ーーーーよし

落ち着いてまずは、相場を調べる。

「代官山 1人暮らし 家賃相場」

「代官山ワンルーム家賃相場 12万円〜1LDK 20万円〜」

ーーーーウソだ。。。。

さっき見た9.8万円の部屋は相場より安かった、管理費は絶対払うもののよう。払うと言うより毎月の家賃と考えるようだ。そうなると、ゆきの家の近くで暮らすには1番安い部屋でも10.6万円。毎日バイトしたとしてもほとんど家賃で消えてしまう。
これは考えていなかった状況だ。心の奥底の怪物がやっと目を覚ました、このまま戦いもせずに近づこうにも近づけない。怪物はデカイ。

何か胸騒ぎがしてゆきに相談することにした。

僕「おはよう、今日バイト?」

返信が来るまで他にも安い部屋がないか調べる。代官山駅から少し離れた学芸大学駅に家賃5万円(管理費5.000円)の部屋を見つけた。とても小さな部屋だけど窓がすごく大きくてお風呂とトイレも別で珍しいようだ。

「ブーーーーッブブッーーーー」

ーー携帯のバイブレーション

ゆき「おはよ〜今日は休みだよ。どうしたの?」

僕「1人暮らしの部屋を探してて、見てもらえないかな」

ゆき「いいよ、15時にいつもの喫茶店でいいかな?」

僕「うん、大丈夫ありがとう。」

ゆき「はーい、寒いから気をつけてね」

ウサギがスキップしたスタンプを送る。

パジャマから着替えてクリスマスにゆきにもらったマフラーを巻いて、自転車で喫茶店へ向かう。道中立ち並ぶ家を見てはあの家は家賃がいくらかだろうか、と考える。
家を出る前に見つけた学芸大学の部屋は25平米と書いてあった。それくらいで十分なのかわからないけど、最低25平米あれば大丈夫と他のサイトに書いてあったので気にすることはなさそう。それでもまだ、心の底の怪物は消えない。家を見つけたくらいじゃ意味がないってこと。

続く



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