レザージャケットの後ろ姿

海と街と誰かと、オワリのこと。#22

レザージャケットの後ろ姿

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.13

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


ザァーーーーーーーーーーザァーーーーーーーーーー
ザァーーーーーーーーーーザァーーーーーーーーーー
ザァーーーーーーーーーーザァーーーーーーーーーー

激しい雨の音で目が覚める。ベットから飛び起き外を見て思わず立ち尽くす。

ーーーーうそだ。。。。

今日は新宿御苑に行く予定だっていうのに外は嵐。薄らと空の先が明るい、時刻は4時45分。この天気では新宿御苑はもちろん、バイトに行くことすら難しい。こんな時間に何かを考えても寝起きで頭は働かないし、8時のアラームが鳴るまでまだ時間がある。しばらく空を見つめる。
なんとなく、朝には回復する気がする。自然と隣り合わせで生きて培った勘が大丈夫、とそっと僕を励ましてくれた。ベットに戻り眠る。。。。

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ーーアラームの音

ゆっくり目を開け、寝過ごさないようベットから離れたところに置いた携帯を取る。

ーーーーあっつ

窓を開けると強い太陽の日差し。強風で飛ばされた葉っぱやどこかの家から飛んできたゴミ箱が、道路に散乱して台風一過のようだ。まだサーファーの勘が残っていて、当たったことが素直に嬉しい。
目一杯、深呼吸をした。ジメジメとした空気、土と葉っぱとアスファルトの匂いがした。東京の空気だ。

気分がいいまま、豆腐だけのお味噌汁を作って朝ご飯を済ませる。シャワーを浴びて服に着替える。歯を磨きながらタオルを洗濯機に入れて、少し部屋の窓を開けたままにして家を出る。

自転車で駅に向かう道は、すっちゃかめっちゃかだった。だけど、いつも綺麗な東京の道が荒れていて朝日に照らされ、キラキラとして綺麗に思えた。ほうきで掃除している近所の方を通り過ぎるときは、心の中でありがとうとお辞儀をした。

駐輪場に自転車を止めて学芸大学駅へ向かう。駅前もなかなか荒れているな。。。。と心配しながら改札へ歩いている時だった。
通勤ラッシュの時間、沢山の人が改札を通る中1人の女性の後ろ姿に目が止まった。長い黒髪、レザーのジャケット。階段を登って顔は見えないけれど、多分美人。もしかしたらいるかも、と少し急いで階段を登った。キョロキョロしたら変態に見えるかもしれないと思い、真っ直ぐ歩いて視線に入ることを祈ったが姿はなかった。


続く



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