NO PAIN, NO GAIN.

Contributed by Daisuke Endo

Trip / feb.28.2019

昔はトライアスロンをやっていたから、無尽蔵とも思える体力があった。

シドニー五輪で正式種目になったときには子どもながらに胸を躍らせ、2012か2016のオリンピックに出場するビジョンを本気で思い浮かべていたくらい。

しかし怪我などで最前線を退いてからというもの、文化系の人間にすっかり転向してしまい、今となっては体力は人並み以下。情けないほどに、何をしてもすぐに息があがる。

それでも自らの体力と筋力の残滓を確かめるために、オアフに来るたび足を運ぶ場所がある。



Koko Crater Railway Trail、俗にココヘッドと呼ぶこの山。

ダイヤモンドヘッドやマカプウ・ライトハウスのように懇切丁寧な登山道が整備されているわけではまったくなく、レールウェイ・トレイルという名が示す通り、戦時中の山頂の基地に物資を運ぶためにつくられた一直線のトロッコ線路を階段代わりに登っていくトレイル。



麓に立った時点でゴールが見える、本当の本当に一直線な階段(線路)。

せいぜい登る人と下る人がすれ違えるくらいの幅しかなく、一度登りはじめれば基本的にゆっくり休憩するスペースはない。
何度来ても息を切らす自分の横を、ロコは散歩のような軽い足取りでエントリーしていく。



等間隔の枕木をひたすら一歩ずつ踏みしめて登っていく。

目線の先に見える山頂はなかなか近づいてこなくても、後ろを振り返れば登ってきた線路の長さが見え、登ったぶんだけ、景色が開けていく。

前回来たときよりも早い段階で息が切れペースが落ちていく自分を追い抜きながら、「もう半分を過ぎたよ!」「あと少しだよ!」とみんな声をかけていってくれる。
山頂までなんなく登れていた頃は(何回前だろう)自分がそう言って誰かを励ましてたのにな。



だいぶ登ってくると、駐車場の横にあった野球場がとても小さく見えた。
この距離を一直線の階段だけで登ってきたと考えると、なんだか変だ。

そうこうしているうちにさっき励ましながら僕を追い抜いていったお姉さんが「頂上の景色を見たら疲れも吹き飛ぶから頑張って」と言いながら下っていく。そのあとからくる人たちも「本当よ」「あと少し」と何かしら声をかけてくれる。

ハワイのこういうところが大好きだ。

そしてようやく着いた山頂。
今までで一番バテたし時間もかかったけど、まだ一応登りきることができた(なんていうふうに書くととんでもない苦行のように聞こえるけど普通に日本人の中年女性グループが涼しい顔して山頂に辿り着くのを見たので、あくまで自分にとって苦行だっただけで大抵の人は普通に登りきれる場所だ)。



ハワイカイの町並みと遠浅な海、遠くにはダイヤモンドヘッドとワイキキのビル群がかすかに見える。

反対側はクレーターを見下ろす方角で、ハワイカイの穏やかな海とは異なり、白波が打ち寄せる海岸線がその向こうにある。



登る途中に声をかけ合った人たちと山頂で再会、労い合ったり写真を撮り合ったりした。

その中の中国人の男性は「ハワイのあとに日本に旅行に行くんだ」と言っていて、おすすめの場所や食べ物やなんかの話をした。

遮るもののない360度の景色と爽やかな風はこの山頂だけのものだ。
あの過酷な線路を踏破した人だけが見ることのできるこの風景は、下りてしまえば簡単には目にできないもの。そう思うと惜しく感じて体力が十分に回復した後もしばらくそこに留まった。

「少しずつ衰えていく自分の体力・筋力でも登ってこられた」と今回もとりあえずほっとしたけど、実は本当に苦しいのは下りだから、登ってみたいという人には是非注意をしていただきたい。

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