Sole, Pizza・・・ e Amore #02

近づく距離

Contributed by Aco Hirai

Trip / 2023.12.20

イタリアへ移住したAco Hiraiが綴る恋愛ストーリー「Sole, Pizza・・・ e Amore」。何気ない日々の中で気付かされるイタリア人パートナーとのたわいもない国際恋愛を綴ります。

#02





私の暮らす「Charming House」の一つ上の階に2人のイタリア人が引っ越してきてから数週間が経った。2人は大学時代の友人らしく、ペペは陽気で気さく、まさにみんなが想像するザ・イタリア人で、その性格ゆえ友達も多く、女の子に気遣いができて誰からも好かれるタイプだった。一方、ロングヘアで作ったお団子がトレードマークのアントニオは、年齢の割に落ち着いていて穏やか。コミュニケーション能力が高い反面、イタリア人らしからぬ、女子に少し冷たい部分がある人だった。本人曰くシャイなだけだと言う。

毎朝エントランスで鉢合わせする彼らとは、徐々に会話も増えすぐに仲良くなった。時に、シェアメイトのヘンリーやユウミがディナーを計画して夕食に招待したり、逆にお呼ばれしてイタリア人が作る絶品ボロネーゼをご馳走になったり、少なからず私たちの間には「GIVE and TAKE」の関係が成り立っていた。そして、シェアメイトや学校の友人たちと一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、まるで学生時代に戻ったような真っ新な気持ちと希望に満ちたキラキラした時間が日常になっていった。

そんな新鮮な毎日が繰り返される中で、ある日を境に食事が終わった後に家から歩いて15分くらいの場所にある「Thirsty」という小洒落たミュージックバーへアントニオと一緒に足を運ぶようになった。きっかけは不慣れな「大人数」というシチュエーションと「多言語」が混じり合う中での言葉疲れ。色々な国籍の人と意見を交換したり、自分の経験談を話したり、聞いたりすることはすごく有意義な時間だけど、同時に大量なエネルギーも消費されるため、後半はスタミナ切れで話が全く入ってこない。だから疲れを感じたら避難場所を見つけて、しっぽりと飲んでいた。「Thirsty」は、レンガでできたゴシック様式の建物で、店内にはピアノと大きな時計が置かれていた。私たちがいつも座るカウンターの後ろがステージになっていて、週末はバンドの生演奏が行われ、平日は程よい音量でUKロックが流れる大人の社交場という感じ。うるさく騒ぐような若者はいなく、ゆっくり落ち着いて話ができるので、彼とここへ来てたわいもない話をするのが好きだったし、彼もそんな私に付き合ってくれていた。もちろん英語でのコミュニケーションは続くけど、アントニオの落ち着いた口調での会話は、いつも私を安心させてくれた。そして、言葉の壁のせいで上手く伝わらない時は、言い回しを変えたり、喩えを用いたりした。お互いを理解しようとしていることがわかると、人間は安心して話ができるということも実感していた。そんな彼とは時には深刻な話、時にはどうでもいい雑談で盛り上がった。国籍が異なるぶん、新たな発見や考え方の違いが面白かったのかもしれない。たまに「私はこう思う」、「僕はこう思う」とお互い譲れない部分もあったけど、会話に張り合いがあってそれはそれで楽しかったのだ。

ただ、その時点ではまだ恋愛感情は芽生えていなかった。留学前に元彼と別れたことから、恋愛に対してネガティブな思いがあったし、何より短期留学中の恋愛は正直面倒だとも感じていた。まさに恋愛モードのスイッチをオフにしていたのだ。だからちょっとしたサインにも気づけないし、自分の気持ちに無頓着にもなっていた。

そんな私の気持ちに変化が訪れたのは、それから約2ヵ月後の帰国が迫った頃だった。


つづく。



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