僕が再びLAへ旅立つ理由

It's Not About Me. It's About My Friends. #1

僕が再びLAへ旅立つ理由

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2023.06.27

アメリカ国内に謎のネットワークを持つ元英語教師・現カルチャーコーディネーターの三井翔さんがお届けする、彼にしか綴れない「旅行記」。今回、2年ぶりのLAへ旅立った目的は友人の結婚式!? 名だたる面々と共に過ごす奇想天外な日々の様子、ハッピーなムード溢れる結婚式の様子をお届け。


前回の連載から随分の月日が流れた。2年近く経つだろうか? 2022年の10月以降、海外から日本への入国の基準が緩和、円安も手伝ってインバウンドは3〜4年ぶりの盛り上がりを見せている。僕の職業も変わってしまったのではないか? と思える程に、海外旅行客のアテンドやコーディネートが劇的に増えた。今や日本の観光名所は海外旅行客のホットスポットと化した。

この2年間で僕の生活も激変した。子供が生まれ、父になり、人生において初めてと言って良いほど大きな責任感を背負ったのだ。と、同時に一人前への道にようやく足を一歩踏み入れられた気もする。そんな中、2年ぶりに僕はLAへと旅立つことになった……。

正直、LAはおろか海外に足を運ぶ機会など、しばらくは無いだろうなと思っていた。世の中は円安だし、1歳にも満たない息子を連れて長丁場のフライトに挑戦する勇気もない。妻と息子を置いていく選択肢もまず無い。の、はずだった。

事の発端も思い返せば、2023年の1月8日に遡る。Emo Nite(LA発のpop punk, emoといったジャンルに特化したDJパーティー 僕はその日本支部を任されている)の新年会をしていた最中に、LUKE Magazine#3でもお世話になったRyan Scott Grahamからビデオ通話が。

「Sho! たった今婚約したんだ!」彼はフィアンセを映しながら興奮気味に言った。「結婚式には来てもらうよ!」

「おめでとう! 当たり前じゃん!」僕は大喜びで即答した。

2ヶ月後の3月15日にRyanから「5月21日にロサンゼルスで結婚します。日にちが近いのも重々承知ですが、是非ともご参列下さい…」的な旨のインビテーションがLINEで来た。

え?! 婚約から結婚ってこんなにスピーディーなんだっけか???

結構戸惑ったし、真っ先に浮かんだのは、まだ生後半年の息子。そして何より、ネックは5月22日が妻の生誕祭であるという事だ。

Ryanが5月21日に結婚をするという事は、時差の都合上日本では5月22日なわけで、それはつまりRyanは妻の誕生日に結婚するという事で、Ryanの結婚記念日は僕の妻の誕生日と同日(アメリカと日本の時差を考慮すると)になる事も意味する。

ヤバ過ぎぃーーーーーーー。。。。。

これは中々切り出せない。どうしよう。そこで、Ryanと自分との歴史について振り返ってみた。

2014年に人気ポップパンクバンドState Champsの一員として初来日した彼はそのツアーの初日にサポートアクトとして出演した僕のバンドAlternative Medicineのパフォーマンス等そっちのけで、日本のアニメやゲームのおもちゃを買い漁り、両手にいっぱいの紙袋を抱えながら姿を現したのが、ちょうど僕らが演奏を終えた時。

「んもぅ、日本マンセー!!!!」

的な事を言いながら満遍の笑みで楽屋に帰って来た。

「何コイツ? 俺の演奏も見ないで、マジうぜー。」

と痛烈にイラッとしたのを今でも覚えている。彼はState Champsのベーシストで当時State Champsは若手ポップパンクバンドの注目株だったし、デビューアルバムの"The Finer Things"を僕は愛聴していたので、プライドをグッと押し殺しライブ終了後、事前に買ってあったレコードに彼からサインを貰った。もちろんバンドメンバー全員から。

翌2015年シカゴのReal Friendsというポップパンクバンドが来日する事になり、僕のバンドがその初日を企画する事になったのだが、帯同アーティストにSpeak Low If You Speak Loveの名前が。

これはRyanの別名義のプロジェクトでState Champsとはまた違ったテイストの音楽で非常に良きなのだ。

心の中で「あいつかぁ…」なんて根に持ちながらライブ当日を迎えたのだが、当のRyanは

「やあ! 僕Ryan!初めまして! よろしくね!」

ってな具合に陽気な挨拶をブチカマしてくるのだ。

「いや、去年State Champsのツアーで会ってるよ」

と返事をすると

「えーマジ?! ごめんごめん! 今回もよろしくね!」



とニコニコだ。何こいつ。めちゃくちゃいい奴じゃん。演奏も最高だったし、そのツアー後の数日間、当時僕の住んでいたマンションのゲストルームに彼は泊まる事となり、一緒に遊びまくったのだ。



結果、僕等は完全にブラザーズとなり以降Ryanとは日本で全国ツアーを2回したし、アメリカで行われていた伝説的なポップパンク夏の風物詩"Warped Tour"に僕の事を招待してくれて、ツアーバスにも5日間泊めてくれた。









一緒に日本旅行も沢山した。豊島直島、広島に滋賀、京都…音楽関係なく遊びまくった。

僕が人生で一番辛い時期を過ごした時も、彼はわざわざアメリカから会いに来てくれた。

そんな彼との思い出が3分位の短時間でうわぁーと脳裏を駆け抜けて行った。

「これは行かない選択肢は無いな……」

そう腹を括った僕は妻に頭を下げて彼女の誕生日を留守にせざるを得ない事を伝える。

「えー。それは行かなきゃじゃん!気にせず行きなよ。いーなぁーLA。」



とても快く背中を押してくれた。いや、それ故の凄まじい罪悪感。今でも妻子共に連れて行けば良かったかなぁーなんて思いながら機内でこれを書いている。しかし、7ヶ月少々の息子に9時間フライトはまだ酷かなぁ……。

と、いうわけで僕はLAに向かっている。

去年の10月以降、またLAからの来客が増え、新しい友達も沢山出来た。そんな彼らや2年ぶりに会う友人、そして結婚するRyanの姿を楽しみに今、胸を躍らせているのだ。

僕の人生は本当に不思議だ。どこか全て友達に導かれている気すらするのだ。そんな今回の僕の短い旅行記をどうぞお楽しみあれ。



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